4 次 VCF CEM3320/V3320 (20) --- 状態変数型フィルタ (2)

 データシート記載の状態変数型 2 次フィルタ回路の LTspice 記述を下に示します。


 PNP バイアス回路はゲインセル・ステージごとに独立して設けています。
 状態変数型フィルタでは、NFB 量が小さいほど Q が高くなり、NFB 量が多いほど Q が低くなるので、フィードバック・ゲインのパラメタは単に「FB」と名付けて「Q」とか「レゾナンス」とかをイメージさせる名前は避けました。
 AC 解析の結果の振幅特性のグラフを下に示します。


 各プロット・ペインは、上から順に、

  • ノッチ出力 (BOUT4 端子)
  • ハイパス出力 (BOUT1 端子)
  • バンドパス出力 (BOUT2 端子)
  • ローパス出力 (BOUT3 端子)

となっています。
 LPF 出力は割とまともですが、BPF 出力の低域の特性は -18 dB 付近に張り付いて、ゲインが下がっていきません。
 また、HPF 出力も低域では -37 dB 付近に張り付いています。 さらに、ノッチ・フィルタ出力では、肝心の「ノッチ」が見えていません。
 HPF、ノッチ・フィルタでは、フラットであるべき高域の特性が減衰していますが、これは単なる OP アンプとして使用しているステージ 1、ステージ 4 のゲインセルのゲインが高域で不足するために生じています。 これは、コレクタ電流を 200 mA 流せるディスクリートトランジスタの 2N3904 / 2N3906 の Cob が 4 pF 程度と大きいためです。 実際の IC チップではトランジスタの面積が小さく、キャパシタンスも十分小さいと思われます。
 電流 10 倍バージョンの回路でシミュレーションすると、この高域の減衰は改善されますが、低域の張り付きは改善されません。 BPF で -18 dB 程度ということから、比率を計算すると、

18 [dB] = 7.94

となり、これは 2020 年 12 月 5 日の記事 (→こちら) で求めたゲインセル出力 (OUT 端子) のインピーダンス約 790 kΩ とフィードバック抵抗 RF 100 kΩ の比に近いことが分かります。
 実際、バイポーラ・トランジスタのモデル・パラメタの「VAF」(順方向アーリー電圧) をいじって出力インピーダンスを大きくした回路でのシミュレーションでは特性に改善が見られました。 それについては次回述べます。