4 次 VCF CEM3320/V3320 (3)
ゲインセルの電流出力 (OUT 端子) の出力インピーダンスを求める LTspice シミュレーション回路を下に示します。
「E_BIAS」電圧制御電圧源で 0.46 VCC の電源から 100 kΩ の抵抗を介して仮のバイアス電流を「IN」入力に与えながら、「OUT」出力を「V_CLAMP」電圧源でクランプしています。
LTspice の「.tf」コマンドで、DC 伝達関数解析を行っています。 結果を下に示します。
--- Transfer Function --- Transfer_function: -1.27119e-006 transfer v_clamp#Input_impedance: 786665 impedance V(v_clamp#Output_impedance): 786665 impedance
インピーダンスの値は約 790 kΩ と、V3320 のゲインセルの出力インピーダンスが公称 1 MΩ なのに比べると少し悪くなっています。 そのため、V3320 では 91 kΩ である RC の値も、正確には (100 [kΩ] // 787 [kΩ]) = 88.7 [kΩ] とするべきですが、特に変えずに 91 kΩ のままで以降のシミュレーションを行っています。
次は、ゲインセルを「フィルタ」ではなく周波数に依存しない単なる反転型 (加算) 増幅器として使う場合です。 4 次 LPF / HPF / BPF / APF の用途では全てのゲインセルを 1 次フィルタとして構成するので、単なる反転増幅器は使用しませんが、2 次状態変数回路としての構成では、反転型加算増幅器が必要になります。
CEM3320 のデータシートにある回路例では、ゲインセル 2 個を積分器として構成し、残りの 2 個のゲインセルを反転型加算増幅器として構成して、LPF / HPF / BPF / BEF の 4 つの出力を同時に得ています。
LTspice シミュレーションでの回路を下に示します。
反転増幅器として構成するには、具体的には OUT 端子にコンデンサを接続せず、ストレー容量だけにして実質的にカットオフ周波数の非常に高い LPF として動作させます。 自己バイアスのためのフィードバック抵抗 RF の値は事実上 100 kΩ に固定されますから、ゲインの調整は RC の値を変えて行います。
結果のグラフを下に示します。
横軸は「VIN」の値です。
「FCIN」をステップさせてゲインセルのゲインを変化させています。 設定ゲインによらずトレースが一定の傾きで全て重なるのが理想です。 結果のグラフは、ほぼ重なっていますが微妙なズレがあります。
カーソル測定機能を利用して実質のゲインをグラフから読み取ると、約 -0.98 と読み取れ、これからフィードバック抵抗の (DC バイアス電流設定ではない信号に関する) 実質的な値を計算すると、
91 [kΩ] × 0.98 = 89.2 [kΩ]
となり、先に求めた出力インピーダンスのシミュレーション値から計算した RF の実質の値 88.7 kΩ に近い値となっています。