OWON SDS1104 (3)

 今回は、ディジタルオシロにとって重要な性能の指標のひとつである AD コンバータのサンプリング・レートの話です。
 SDS1104 は最高サンプリング・レートが 1 G サンプル/s ですが、これは単一のチャネルのみ表示させた場合で、全 4 チャネルを表示させると各チャネル当たりのレートは 250 M サンプル/s まで低下します。
 これは、ハードウェア的には 250 M サンプル/s の AD コンバータが、それぞれの入力チャネルに対して 1 インスタンスずつ割り当てられていると考えられます。 250 M サンプル/s までのレートでは 4 つの AD をフルに使って全 4 チャネル同時サンプリングを行い、より少ないチャネル数に対しては「空き」となった AD を利用して、「タイム・インターリーブ」によってサンプリング・レートを上げていると思われます。
 2 チャネルのみ表示する場合は最大 500 M サンプル/s までレートを上げられるはずですが、実際には 500 M サンプル/s まで達する組み合わせ (2 通り) と、250 M サンプル/s までしか上がらない組み合わせ (4 通り) が存在します。  これは、ハードウェア上の都合と思われます
 また、3 入力の組み合わせ (4 通り) に対しては、AD の「空き」がひとつだけとなり、有効活用できないので 4 入力の場合と同じ最高 250 M サンプル/s になります。
 表示する入力チャネルと、最高サンプリング・レートとの対応表を示します。

サンプリング
レート
CH1 CH2 CH3 CH4
1 G S/s × × ×
1 G S/s × × ×
1 G S/s × × ×
1 G S/s × × ×
500 M S/s × ×
500 M S/s × ×
250 M S/s × ×
250 M S/s × ×
250 M S/s × ×
250 M S/s × ×
250 M S/s ×
250 M S/s ×
250 M S/s ×
250 M S/s ×
250 M S/s
 AD サンプリング・レートが 1 G サンプル/s まで上がる、単一チャネルのみ表示させる場合の表を示します。
 第 1 列が水平軸 (時間軸) のタイムスケール設定で、第 2 列が (実効) AD サンプリング・レート、第 3 列が 1 div 当たりの AD サンプル数、第 4 列が 50 ピクセル/div で表示するために必要な補間あるいは間引きのレートです。

単一チャネルのみ表示させた場合
TIME/div AD サンプリング
レート
1 div 当りの
AD サンプル数
表示のための
補間/間引き
2 ns/div 1 G S/s 2 ×25
5 ns/div 1 G S/s 5 ×10
10 ns/div 1 G S/s 10 ×5
20 ns/div 1 G S/s 20 ×2.5
50 ns/div 1 G S/s 50 1/1
100 ns/div 1 G S/s 100 1/2
200 ns/div 1 G S/s 200 1/4
500 ns/div 1 G S/s 500 1/10
1 μs/div 1 G S/s 1000 1/20
2 μs/div 500 M S/s 1000 1/20
5 μs/div 250 M S/s 1250 1/25
10 μs/div 100 M S/s 1000 1/20
20 μs/div 50 M S/s 1000 1/20
50 μs/div 25 M S/s 1250 1/25
 タイムスケールが 1 μs/div で AD サンプリング・レートは最高の 1 G サンプル/s に達し、それより「速い」タイムスケールではレートが 1 G サンプル/s で頭打ちになります。
 タイムスケールが 50 ns/div で div あたりの AD サンプル数が 50 となり、表示ピクセル数と等しくなるので、補間も間引きもされずに AD 変換された値がそのまま表示されます。 それより速いタイムスケールでは補間、それより遅いタイムスケールでは間引きを行って表示されます。
 十分遅いタイムスケールでは、div 当たりの AD サンプル数が 1000 あるいは 1250 となっています。 1 チャネルのみ表示のモードでは、バッファメモリのレコード長は 20 k サンプルですから、
   20000 / 1000 = 20 [div]
あるいは
   20000 / 1250 = 16 [div]
分のサンプル・データがメモリに格納されることになります。
 波形表示部の幅は 15.2 div ですから「不足」はしていませんが、「余裕」はありません。
 上位機種のなかには数十 M サンプル級のメモリを内蔵するものもあり、ローコスト版である SDS1104 では、コスト削減のためにメモリ容量が削られていると思われます。
 表ではもっと遅いタイムスケールは省略していますが、ほぼ同様の繰り返しとなります。
 500 M サンプル/s までレートが上がる 2 入力の組み合わせの場合の表を示します。



(CH1 + CH2) または (CH3 + CH4) の組合わせの 2 チャネル表示
TIME/div AD サンプリング
レート
1 div 当りの
AD サンプル数
表示のための
補間/間引き
2 ns/div 500 M S/s 1 ×50
5 ns/div 500 M S/s 2.5 ×20
10 ns/div 500 M S/s 5 ×10
20 ns/div 500 M S/s 10 ×5
50 ns/div 500 M S/s 25 ×2
100 ns/div 500 M S/s 50 1/1
200 ns/div 500 M S/s 100 1/2
500 ns/div 500 M S/s 250 1/5
1 μs/div 500 M S/s 500 1/10
2 μs/div 250 M S/s 500 1/10
5 μs/div 125 M S/s 625 2/25
10 μs/div 50 M S/s 500 1/10
20 μs/div 25 M S/s 500 1/10
50 μs/div 10 M S/s 500 1/10
 2 入力で少しでも速いサンプリング・レートが必要なら、(CH1 + CH2) あるいは (CH3 + CH4) のいずれかの組み合わせを選択する必要があります。
 タイムスケールが 1 μs/div で AD サンプリング・レートは最高の 500 M サンプル/s に達し、それより「速い」タイムスケールではレートが 500 M サンプル/s で頭打ちになります。
 タイムスケールが 100 ns/div で div あたりの AD サンプル数が 50 となり、表示ピクセル数と等しくなるので、補間も間引きもされずに AD 変換された値がそのまま表示されます。 それより速いタイムスケールでは補間、それより遅いタイムスケールでは間引きを行って表示されます。
 十分遅いタイムスケールでは、div 当たりの AD サンプル数が 500 あるいは 625 となっています。 2 チャネル表示のモードでは、バッファメモリのチャネル当たりのレコード長は 10 k サンプルですから、
   10000 / 500 = 20 [div]
あるいは
   10000 / 625 = 16 [div]
分のサンプル・データがメモリに格納されることになります。
 250 M サンプル/s までしかレートが上がらない場合の表を示します。


(CH1 + CH2)、(CH3 + CH4) 以外の組合わせの 2 チャネル表示 (4 通り)
または、任意の 3 チャネル表示 (4 通り)
または、4 チャネル表示 (1 通り) のいずれか
TIME/div AD サンプリング
レート
1 div 当りの
AD サンプル数
表示のための
補間/間引き
2 ns/div 250 M S/s 0.5 ×100
5 ns/div 250 M S/s 1.25 ×40
10 ns/div 250 M S/s 2.5 ×20
20 ns/div 250 M S/s 5 ×10
50 ns/div 250 M S/s 12.5 ×4
100 ns/div 250 M S/s 25 ×2
200 ns/div 250 M S/s 50 1/1
500 ns/div 250 M S/s 125 2/5
1 μs/div 250 M S/s 250 1/5
2 μs/div 125 M S/s 250 1/5
5 μs/div 50 M S/s 250 1/5
10 μs/div 25 M S/s 250 1/5
20 μs/div 10 M S/s 200 1/4
50 μs/div 5 M S/s 250 1/5
 このモードでは 2 入力の場合でも 250 M サンプル/s までしか上がりませんが、各チャネル専用 AD による実時間同時サンプリングとなるので、レートよりリアルタイム性が重要な場合はこちらを選びます。
 タイムスケールが 1 μs/div で AD サンプリング・レートは最高の 250 M サンプル/s に達し、それより「速い」タイムスケールではレートが 250 M サンプル/s で頭打ちになります。
 タイムスケールが 200 ns/div で div あたりの AD サンプル数が 50 となり、表示ピクセル数と等しくなるので、補間も間引きもされずに AD 変換された値がそのまま表示されます。 それより速いタイムスケールでは補間、それより遅いタイムスケールでは間引きを行って表示されます。
 十分遅いタイムスケールでは、div 当たりの AD サンプル数が 250 あるいは 200 となっています。 このモードでは、バッファメモリのチャネル当たりのレコード長は 5 k サンプルですから、
   5000 / 250 = 20 [div]
あるいは
   5000 / 200 = 25 [div]
分のサンプル・データがメモリに格納されることになります。