4 次 VCF CEM3320/V3320 (7) --- 1 次 APF (2)

 ゲインセル 1 回路を使った「10 倍電流版」1 次 APF の LTspice シミュレーションの回路を下に示します。


 コンデンサキャパシタンスは 10 倍の 3000 pF とし、外付けの抵抗値はすべて 1/10 にしています。
 PNP バイアス回路の Iref 電流を決めている抵抗も 22 kΩ とするためにバイアス回路内蔵の 220 kΩ と外付けの 24.4 kΩ の抵抗を並列にして (220 // 24.4) = 22 [kΩ] の合成抵抗を得ています。
 結果のグラフを下に示します。 上側の「ペイン」が振幅特性 (縦軸左側目盛り)、下側のペインが位相特性 (縦軸右側目盛り) です。


 赤色のトレースが FCIN = -18.2 mV (周波数最大、ゲインセル電流最大)、青色のトレースが FCIN = 0 mV です。 以降、18.2 mV ステップでプロットされており、茶色のトレースが FCIN = 163.8 mV (周波数最小、ゲインセル電流最小) に対応します。
 低域で約 -0.17 dB のゲイン特性となっていますが、これは LPF の低域ゲインを表しており、高域の約 -0.02 dB のゲインは HPF の高域ゲインを表しています。
 これは、RC の値を変化させて LPF のゲインを調整すると、より平坦にできます。 結果のグラフは示しませんが、RC = 8.94 kΩ でゲインは -0.017 dB から -0.038 dB の範囲におさまりました。
 FCIN = -18.2 mV (赤色のトレース)、FCIN = 0 mV (青色のトレース) 以外では特に特性が暴れることもなく、なめらかにゲインが変化しています。
 電流の多いところで特性が他の場合とズレてきているのは、トランジスタ端子の「オーミック抵抗」分の影響と思われます。
 PN 接合の特性を利用している回路なので、オームの法則にしたがう「オーミック抵抗」の存在は動作の邪魔になります。 2N3904 / 2N3906 ではエミッタ抵抗 RE は 0.1 Ω 程度ですが、10 倍電流版では FCIN = -18.2 mV でゲインセル電流が約 1.3 mA となるので、エミッタ抵抗 RE による電圧降下が 0.13 mV 程度となり無視できないレベルになってきます。