4 次 VCF CEM3320/V3320 (11) --- 4 次 LPF (3)

 周波数 CV の値は固定し、フィードバック量をステッピングしてレゾナンス量を変えた 4 次 LPF の回路を LTspice で記述したものを下に示します。 「回路図」の部分は 2020 年 12 月 17 日付けの記事 (→こちら) の「通常電流版」と同一なので省略し、spice コマンドを貼り付けた部分のみを示します。


 AC 解析の結果の振幅特性のグラフを下に示します。


 カットオフ周波数が 1 kHz 程度になる FCIN の設定値を探し出し、その値に固定しています。
 「通常電流版」なので、振幅が -60 dB 程度になる 10 kHz 付近で減衰スロープが乱れています。
 「RESO」の値とトレースの色との対応を下に示します。

RESO トレースの色
0.0
0.25
0.50
0.75 マゼンタ
1.0 シアン

 RESO = 1.0 は発振開始の条件ですが、AC 解析が行われる周波数がピンポイントで発振条件と合致するとは限らないので、「発振」に相当するシミュレーションの発散は生じていません。
 次はいわゆる「CV 漏れ」(CV フィードスルー) についてのシミュレーションです。
 V_FCIN を DC 解析でソース電圧源として指定しステッピングさせ、BOUT3 / BOUT4 出力の DC 動作点を観察しています。


 これも回路図部分は先日の記事と同一なので省略してあります。
 DC スイープ解析の結果を下に示します。 (2020 年 12 月 19 日追記: グラフを差し替え、記述を変更しました。)

 上のプロット・ペイン (青色のトレース) が BOUT3 出力で、下のプロット・ペイン (赤色のトレース) が BOUT4 出力です。 
 BOUT3 出力の DC 動作点の最小が 8.1257 V、最大値が 8.1470 V で、その差は 21.3 mV となっています。
 BOUT4 出力の DC 動作点の最小が 5.9548 V、最大値が 5.9569 V で、その差は 2.1 mV となっています。
 示してはいませんが、BOUT1 と BOUT2 についても同様の傾向が見られました。
 これは、各ゲインセルは反転増幅なので、奇数段のゲインセルで生じた DC 動作点の偏移の方向と、偶数段で付加される偏移の方向とが逆になって打ち消し合うためと思われます。
 また、シミュレーション上は同種のトランジスタは全く同じ特性で、完全にマッチングが取れているため、もともとの偏移量が小さいものと思われます。
 2SA1015 / 2SC1815 を全くの無選別で使用してディスクリート素子で組んだゲインセル 1 段の回路の実測では、約 290 mV の変動がありました。