4 次 VCF CEM3320/V3320 (10) --- 4 次 LPF (2)

 CEM3320/V3320 のデータシートに掲載されている 4 次 LPF の回路を LTspice で記述したものを下に示します。


 レゾナンス量を調節するためのトランスコンダクタンス・アンプのゲインの設定は、実チップでは電流制御できるようになっていますが、簡単のためシミュレーションでは単なる「電圧制御電圧源」(E エレメント) のゲイン設定値をパラメタ化して実現しています。
 実チップのトランスコンダクタンス・アンプは電流出力となっていますが、これも簡単のため電圧出力とし、91 kΩ の抵抗で電流に変換し、ステージ 1 のゲインセルに入力しています。
 電圧制御電圧源のシンボルは「E2」を使用し、入出力が反転するように接続して、ゲインの数値自体は正の値を指定しています。
 フィードバック・ゲインはレゾナンス量を表すパラメタ「RESO」に「4」をかけて設定しているので、RESO = 1.0 が発振開始レベルを表すことになります。 このシミュレーションでは RESO = 0.95 として、発振開始レベルの 95 % に相当するレゾナンス量にしています。
 AC 解析の結果の振幅特性のグラフを下に示します。


 赤色のトレースが FCIN = -18.2 mV (周波数最大、ゲインセル電流最大)、青色のトレースが FCIN = 0 mV です。 以降、18.2 mV ステップでプロットされており、茶色のトレースが FCIN = 163.8 mV (周波数最小、ゲインセル電流最小) に対応します。
 高域の振幅減少のスロープが本来の -24 dB/oct から、振幅が -60 dB 付近以下の領域で -12 dB/oct に劣化しているのは、トランジスタ電極間の容量 Cob によるものです。
 回路のインピーダンスを 1/10 に、電流値を 10 倍に、抵抗値を 1/10 に、キャパシタンスを 10 倍にして、Cob の影響を 1/10 にした回路を下に示します。

 抵抗値およびキャパシタンスをパラメタ化してあるので、10 倍以外の設定も可能です。
 結果の振幅特性のグラフを下に示します。

 振幅減衰のスロープが劣化するレベルが約 -80 dB に変化していて、劣化の影響が -20 dB = 1/10 倍となっていることが分かります。