4 次 VCF CEM3320/V3320 (5) --- 1 次 HPF

 ゲインセル 1 回路を使った 1 次 HPF の LTspice シミュレーションの回路を下に示します。


 ゲインセル本体はサブサーキットの呼び出しコマンドで実現しているので、回路図としては周辺の回路しか記述しておらず直観的ではありません。
 それを補うため、左にゲインセルの回路シンボルを使用した回路図を示しています。
 電圧源「VIN」が AC 解析の入力です。 LPF の場合とは違って、ゲインセルの「IN」端子側ではなく「OUT」端子に接続されたコンデンサの一端から信号を入力します。
 周波数 CV 入力「FCIN」を -18.2 mV から 163.8 mV まで 18.2 mV 間隔でステップさせています。
  交流電圧計「ACV METER」が接続してある「BOUT」端子はグラフのプロットの対象として選ばれていることを示しています。
 結果のグラフを下に示します。

 赤色のトレースが FCIN = -18.2 mV (周波数最大、ゲインセル電流最大)、青色のトレースが FCIN = 0 mV です。 以降、18.2 mV ステップでプロットされており、茶色のトレースが FCIN = 163.8 mV (周波数最小、ゲインセル電流最小) に対応します。
 信号は増幅回路を経ずに直接コンデンサに加わることから、高周波数の平坦部のゲインは 0 dB となることが期待されますが、グラフからカーソル機能を利用して読み取ると、FCIN = 163.8mV、100 kHz 付近で約 -0.11 dB となりました。
 これは、コンデンサに注入される電荷の一部がトランジスタの電極間の容量 Cob などを充電するのに使われ、電荷コンデンサの中に 100 % 留まらないためにコンデンサ電極間の電位差が減少するせいだと思われます。 Cob の値としては、スペック上は 2N3904 は 4 pF、2N3906 は 4.5 pF となっています。
 300 / (300 + 4) = 0.987 = -0.115 [dB]
なので、オーダーとしては合っていると思います。
 カットオフ周波数、つまりゲインが -3 dB となる周波数は、FCIN = -18.2 mV (赤色のトレース) で約 13 kHz と読み取れます。 FCIN = 0 mV (青色のトレース) では約 6.3 kHz、FCIN = 163.8 mV (茶色のトレース) では約 11.3 Hz になっています。