4 次 VCF CEM3320/V3320 (16) --- 4 次 BPF (2)
データシート記載の 4 次 BPF 回路の、信号に注目したブロック・ダイアグラムを下に示します。
その伝達関数 F(s) は、
と表されます。
データシートの回路では、
ですから、これらを代入すると、伝達関数 F(s) は、
と求められます。 A = 3.28 = 4 × 0.82 として振幅の周波数特性を求めると、
のようになります。 ピーク正規化角周波数をプロットからカーソル機能を使って読み取ると約 0.41 [rad/s] で、本来の値「1」[rad/s] より低くなっています。
データシート記載の 4 次 BPF 回路を、負電源ピンまわりを省略して書き直したものを下に示します。 (図をクリックすると拡大します。)
この回路の LTspice シミュレーション記述を下に示します。
異種のフィルタ間での干渉を防ぐために、PNP バイアス回路のインスタンスをふたつ作成して、LPF 構成のステージふたつに対してひとつのインスタンスを割り当て、HPF 構成のステージふたつに対してもうひとつのインスタンスを割り当てています。
AC 解析の結果の振幅特性のグラフを下に示します。
赤色のトレースが FCIN = -18.2 mV (周波数最大、ゲインセル電流最大)、青色のトレースが FCIN = 0 mV です。 以降、18.2 mV ステップでプロットされており、茶色のトレースが FCIN = 163.8 mV (周波数最小、ゲインセル電流最小) に対応します。
振幅が -80 dB 程度以下の領域で減衰スロープが本来のものより緩やかになっています。 PNP バイアス回路をすべてのステージに対して共通にすると、高域で -40 dB 付近から大きく振幅特性が乱れました。 LPF 構成のステージ用のバイアス回路と、HPF 構成のステージ用のバイアス回路とを分けると大幅に改善されました。
ピーク周波数をカーソル機能を使って読み取ると、FCIN = -18.2 mV (赤色のトレース) で約 5.01 kHz となっています。 「正しいフィードバック」構成でのピーク周波数 12.2 kHz との比を取ると、5.01 / 12.2 = 0.41 となり、理論の結果と一致しています。