4 次 VCF CEM3320/V3320 (19) --- 状態変数型フィルタ (1)

 データシート記載の 2 次状態変数型フィルタの回路図を書き直したものを下に示します。 (図をクリックすると拡大します。)

V3320_svf_dia2_small.png

 負電源ピン (13 番ピン) まわりの回路は省略しています。 パッケージのピン配置に沿って記述してあり、少し読みにくいのでゲインセル「ステージ」本位に書き直したものを下に示します。

V3320_svf_dia_small.png

 ステージ 1 から 3 のゲインセルで 2 次状態変数フィルタの HPF / BPF / LPF が構成されていて、ステージ 4 はノッチフィルタの特性を得るための付加的な回路なので上の図では省略しています。
 ステージ 1 は「反転型加減算器」として使われています。 ゲインセルには「反転入力」しかなく、入力はすべて「加算」されるように見えますが、チップ内蔵の Q コントロール・フィードバック用のゲインセル出力は極性が反転しているので、実質は「減算」が行われることになります。
 ステージ 2 と 3 とは「反転型積分器」として使われています。 「積分器」なので、ステージ単体ではフィードバックをかけません。 したがって、「IN」と「BOUT」の間には 100 kΩ の抵抗を接続しません。
 ステージ 1 → ステージ 2 → ステージ 3 と縦続接続されていますが、ステージ 3 出力から RC1 (91 kΩ) の抵抗を介してステージ 1 に入力にフィードバックされています。 「反転型」回路を 3 つ経由して信号が戻されるので、これは負帰還 (NFB) となっています。
 帰還ループの中に積分器をふたつ含んでおり、NFB によって積分器の出力が発散しないように保たれています。 したがって、この帰還ループは「直流」が通らなければなりません。
 反転型積分器の入力が接続される先は、ひとつ前のステージの出力ですから、その DC レベルは VCC/2 程度であり、通常はステージのフィードバック抵抗として使われる値の抵抗、つまり 100 kΩ で前段の出力とつなぐと適正なバイアスが得られます。
 AC 的には 91 kΩ の抵抗が妥当なので、そのままではカットオフ周波数が 1 割ほど低くなります。 それを避けるために、「OUT」端子に接続する 300 pF のコンデンサの値を 1 割減らして 270 pF にしています。
 ステージ 2 出力 (BPF 出力) から RQ (330 kΩ) を通してステージ 1 の入力に「正帰還」がかけられています。 これは、「積分器」がトランジスタの出力コンダクタンスの影響により理想積分器からズレて高い Q が実現しにくくなる現象への対策です。