OTA/VCA/PGA を使用した 2 次特性 VCF (9)
PSoC5LP 内蔵の OP アンプと、SC/CT (Switched Capacitor/Continuous Time) ブロックの PGA (Programmable Gain Amplifier) 機能を利用して、状態変数型の 2 次フィルタを構成する実験をしてみました。
ただし、PGA で可変できるゲインの最大と最小の比が約 50 (約 33 dB) であり、要求される VCF のカットオフ周波数レンジを 20 Hz 〜 20 kHz の 1000 倍 (60 dB) とするなら、その半分程度の可変幅しかありません。
構成する状態変数回路のブロック図を下に示します。
ここで、反転型 PGA と 反転型 (つまり普通の) 積分器との縦続接続により、下の図のような可変ゲイン正相 (非反転) 積分器を構成しています。
ここで、実際には PGA は下の図のように SC/CT ブロックの TIA (Trans-Impedance Amplifier) モードを利用し、外付けの抵抗を付加して実現しています。
PGA といっても、本当に「増幅」すると出力のクリップによってダイナミック・レンジが制限されてしまうので、ゲインが 1 以下となる「減衰」方向に作用させています。
たとえば、5 V 電源ではクリップしない出力レベルは 5 Vp-p が最大ですが、そのときのゲインが 10 だとすると、入力換算では 0.5 Vp-p がクリップしない限界となってしまいます。
ゲインが 1 以下であれば、出力のクリップが原因となるダイナミック・レンジの制限は生じません。
その代わり、信号を減衰させるので S/N の点では不利になります。
PSoC5LP の TIA では、フィードバック抵抗は 20 kΩ 〜 1 MΩ の範囲の 8 種の値を選択できます。 具体的には、下の 8 つの値となります。
20 kΩ、 30 kΩ、 40 kΩ、 60 kΩ
120 kΩ、 250 kΩ、 500 kΩ、 1000 kΩ
フィードバック抵抗が 1 MΩ の場合にゲインが 1 となるように、外付けの抵抗も 1 MΩ に選んでいます。
フィードバック・コンデンサは、なし / 1.3 pF / 3.3 pF / 4.6 pF の 4 種から選択できますが、「なし」以外ではカットオフ周波数が高い場合に特性に影響が現れたので、「なし」を選んでいます。 ただし、小さな振幅の高周波数での発振が見られます。
PGA のゲインが 1 の場合にフィルタのカットオフ周波数が約 20 kHz になるように、反転型積分器の回路定数を選んでいます。
回路全体では、PSoC5LP 内蔵の TIA を 2 個、OP アンプを 3 個 (反転型加算回路に 1 個、積分器に 2 個) 使用しています。
Q が約 5 になるような設定で、PGA のゲインの設定を 3 通りに変えて WaveGene/WaveSpectra を使って TSP (Time Stretched Pulse) 法で測定した結果を下に示します。
黒色のトレースがゲイン最小 (20/1000) の場合で、赤色のトレースが中程度のゲイン (120/1000) の場合、青色のトレースがゲイン最大 (1000/1000) の場合です。
Q を約 5 に設定し、ゲインを (40/1000) に設定して、LPF / BPF / HPF 出力を測定した結果を下に示します。
黒色のトレースが LPF 出力、赤色のトレースが BPF 出力、青色のトレースが HPF 出力です。
赤色の BPF 出力および青色の HPF 出力の周波数が低くレベルの小さい部分でグラフが「ギザギザ」しているのは、FFT 点数が 8192 ポイントと少ないために生じた見かけ上のもので、実際に特性がギザギザしているわけではありません。