ノートンアンプによる OVCE タイプの VCA (2)

前回の回路の回路定数を見直して、3.3 V 単電源に対応する回路としました。
ノートンアンプ LM3900 の使用推奨電圧範囲は 4 〜 32 V ですが、内部回路 (アプリケーション・ノート AN-72) を見る限りでは、「縦積み」になっているのは Vbe 4 個分が最大なので、電源電圧 3.3 V でも回路動作自体に支障を来たすことはないと考えられます。
電源電圧範囲の下限は、おそらく、バイアス回路の中の J-FET による定電流回路が、電源電圧が下がってくると定電流性を失って、バイアス電流が減少し、さらに電源電圧に依存するようになってきて性能が低下し始める電圧を指していると思われます。
したがって、いくぶんの性能低下はあるかも知れませんが、3.3 V で十分に動作は可能なはずです。
3.3 V 単電源動作用に回路定数を変更した回路を下に示します。

説明のために、部品番号も付けました。
3.3 V 動作での一番の問題点は、LM3900 の出力電圧の上限は (Vcc - 1) V 程度のため、出力電圧は 2 Vp-p 程度しか取れないことです。
最大の出力振幅を得るためには、無信号時の出力電圧を 1 V 程度の値ににバイアスしておく必要があります。
OVCE ゲインセルのベース・バイアス電圧も下げる必要があり、ここでは、手持ちの 1.2 V リファレンスの ICL8069 を利用して、1.23 V にバイアスしてあります。
それにともなって、ゲインコントロールの CV 入力も 0 〜 1.23 V のレンジとなっています。
回路図ではゲインセルの PNP トランジスタに 2 個入りの 2SA1618 を使っていますが、通常の差動アンプとは違い、常にバランスを崩して使う回路なので、熱結合はともかく、特性のマッチングに神経質になる必要はありません。
試しに、Q1 と Q2 に「Y」ランクの 2SC1015、Q3 と Q4 に「GR」ランクの 2SC1015 を、全く無選別で使用してみましたが、VCA の可変ゲイン動作自体には何の問題もありませんでした。
また、無信号時の出力バイアス電圧の変動は CV 入力電圧をフルに振って 40 〜 50 mV 程度の値で、2SA1618 でも無選別の 2SC1015 でも大差ありませんでした。
これは「CV 漏れ」の成分であり、聴感上はエンベロープによる「クリック」として聞こえることになりますが、まだ実際には EG 電圧を入力してテストしていないので、影響がどのくらいあるかは分かりません。
50 mV の変動で実用上問題がなければ、選別の必要もなく 2SC1015 を使って VCA 回路を実現できることになります。