V2164 の特性測定 (6)

前回の補償回路は、Vc の値により変化するベース電流に、シンク方向の補償回路の電流を重畳し、差動ペアの左右それぞれのトータルのバイアス電流を均等に保つものでした。
今回はシンク方向のベース電流にソース方向の補償電流を重ね、バイアス電流をゼロに近づける方式のシミュレーションを行います。
回路図は (→こちら)
補償回路部付近を抜粋した回路図を下に示します。

Q26、Q27、Q30、Q31 は前回と同じ回路で、やっていることは、芸もなく、PNP カレントミラー Q28、Q29、Q32、Q33 で補償電流を「折り返し」てシンク方向をソース方向に変えているだけです。
前回の回路では補償電流を「分配」する差動ペア Q30、Q31 のコレクタを「たすきがけ」して、ゲインセルの差動ペアのベースにつないでいましたが、この回路ではカレントミラーで折り返した電流を、差動ペアの同じ側のベースに流し込んでいます。
この回路のカレントミラーの「電源」は、プラス側の電源レイルではなく、ゲインセルのカレントミラー Q11 〜 Q14 用の電源 (グラウンド + 2Vbe 程度の電位) を利用しています。
ベース抵抗を流れる電流のシミュレーション結果を下に示します。

グラフは扇型になっていて、一見、補正されていないように見えますが、縦軸のスケールは nA で、最大値が 9 nA 程度の値です。
補償がない場合のベース電流はテイル電流 125 μA に対して 0.7 μA の程度でしたから、補償回路でベース電流の 99 % 近くがキャンセルされ、1 % 程度がキャンセルされずに残っていることになります。
RBASE を変えながら入力電圧を振って、直線性誤差を見たのが次のグラフです。

前回の結果と比べると、RBASE の変化に対する変動が大きくなっていますが、それでも特性は大きく改善されていることが分かります。