V2164 の特性測定 (5)

LTspice 用の SSM2164 シミュレーション回路にベース電流補償回路を組み込んでみました。 (回路図は→こちら)
補償回路部分の回路を下に示します。


Q7 〜 Q10 がゲインセルを構成するトランジスタで、そのベースにつながっている Q30、Q31、Q26、Q27 の4つの NPN トランジスタがベース電流補償回路です。
位相補償回路の寄与はないので、テイル電流の検出部のトランジスタ (Q26、Q27) は1段だけです。
まず、このベース電流補償回路がない場合の、ベース抵抗を流れるバイアス電流のシミュレーション結果を下に示します。

グラフの横軸は差動ペア1対分のテイル電流で、ゲインセル全体の電流としては、その2倍になります。
赤色の線が Vc 側の 4.5 kΩ と 500 Ω の並列抵抗に流れる電流値で、青色の線がその反対側の 450 Ω の抵抗を流れる電流値です。
Vc の電圧を 0 V から 0.27 V までステップさせてプロットしているので、ベース電流の変化により、グラフが扇型になっています。
補償回路がある場合の同じシミュレーションの結果を下に示します。

回路シミュレーションですから、トランジスタの特性はすべて揃っており、温度差もないので、ほぼ完全に補償されており、このグラフのスケールでは全ての線は重なって見えています。
補償回路なしの場合は、テイル電流 125 μA に対し、Vc = 0 V でベース電流は両方等しく 0.7 μA 程度でしたが、補償回路により電流が付加されて、トータルのバイアス電流としては、補償回路なしの場合の2倍の約 1.4 μA に揃えられているのが分かります。
下の図は、補償回路なしの場合の、テイル電流一定、Vc = 0.27 V 一定にして、RBASE を 0.1、1、2 と変えながら入力電圧を -5 V から 5 V まで振った結果です。

同様の図は以前にも掲載しましたが、今回はテイル電流が約半分になっており、非直線性が大きくなっています。
下に補償回路ありの場合の結果を示します。

グラフの曲がりが大きくなっているように見えますが、前の図とは縦軸のスケールが違っていて、温度換算で約 1 ℃以内の誤差におさまっています。
RBASE の変化に対してもズレは小さく、補償回路なしの場合に比べて大幅な改善となっています。
次回は、補償電流をソース側にして、合計のバイアス電流自体をゼロに近づける補償回路のシミュレーションを行います。