アナログシンセの VCO ブロック (33) -- 温度補償回路(3)

houshu さんの SSM2164 を使った温度補償回路の LTspice シミュレーションの追試のようすを書きます。
(→こちら)が回路図入力です。
トランジスタなどの番号は、システムが勝手に振っていった番号そのままで、houshu さんの回路図の番号とは合わせてありません。
SSM2164 の入出力部分にはラベルを付け、外部回路との接続はラベルを介して行っており、直接に配線はしていません。
当初、「ゲインセル」部分の PNP カレントミラーの接続を間違えて正しい結果が得られませんでした。
SSM2164 のデータシートおよび houshu さんの回路図では下の (A) の図のようになっています。

一般的なギルバート・セル・ミキサでは、2つの差動ペアの計4本のコレクタ出力を2つずつまとめて (加算して) 負荷につなぐのですが、この回路では PNP カレントミラーで「差」を取っています。
一見、その接続が規則的でないように見えるので、当初、接続を間違ってしまいました。


差動ペアはそのまま、カレントミラーはバラして書くと、左の (B) の図のようになります。
前記の LTspice 用の回路図は、この表現で書いてあります。


さらにカレントミラーの方はまとめて、差動ペアの方をバラして書くと、左の (C) の図のようになります。
この表現では、同じカレントミラーにつながっている差動ペアのベースどうしが接続されているので、それぞれの差動ペアのテイル電流を、同じ割合だけ「分配」したものがカレントミラーに流れ込むことが分かります。
シミュレーション結果のグラフを下に示します。

グラフの横軸は CVinput 電圧で、下のグラフの縦軸は出力電流です。
SSM2164 の出力コンプライアンス電圧は ±0.1 V と狭いので、電圧出力が必要な場合には OP アンプによる、いわゆる I-V 変換が必要ですが、ここでは簡単のため、0 V の電圧源につなぎ、そこを流れる電流を観測しています。
上のグラフはゲイン、つまり入出力特性の傾きを、温度 25℃、入力 0 V の点を基準に表したものです。
赤、青、緑の線が、それぞれ 20℃、25℃、30℃の場合です。