XR2206 (13)

相変わらず、VCO の直線性の測定をやっています。
NJM4151 用の回路に3か所ほど変更を加えました。 回路図を下に示します。

変更箇所は、

  • NJM4151 のコンパレータのスレシホールド電圧の設定を 6 V から 3 V に変えた

  • OP アンプの入力に接続している抵抗を 47 kΩ から 470 Ω に変えた

  • DAC 出力部にオフセット調整用の VR を追加した

の3つです。
まず、コンパレータの電圧設定を変えた理由を説明します。
理想的な積分器であれば、入力電圧がゼロでない場合、出力はノイズによってランダムに変動しながらも、入力電圧の符号によって OP アンプのプラス側、あるいはマイナス側で飽和する最大出力まで振り切る形になります。
しかし、実際の回路では、オフセット・ゼロを含む 2 〜 3 LSB の範囲で入力電圧を変化させても、 OP アンプ出力は最大値まで達することなく、途中の値までしか変化しませんでした。
これは、おそらく、回路素子の漏れ電流や実装上の問題で、数十 MΩ 〜 数百 MΩ オーダーの寄生抵抗分により、出力電圧が制限されるせいだと思われます。
確実にオフセット・ゼロから 1 LSB 上の電圧を与えても、出力電圧はコンパレータのスレシホールド電圧 6 V まで達せず、つまり VCO としては発振を開始しないという状態になっていました。
そこで、コンパレータのスレシホールドを 3 V に設定して、OP アンプ出力が入力コモン電圧 2.5 V からわずかに正に振れたところで VCO の発振が始まるようにしました。
また、OP アンプ入力に接続してある抵抗 (R3, R4) の値を小さくしたら、出力の変動が多少減りました。
熱雑音が問題になるレベルではないと思うので、回路のインピーダンスを下げることで、他の要因による変動が抑えられたのではないかと思います。
変動が減って何とかゼロ点を見つけられるようになったので、DAC 側に回路を追加し、VR で 1 LSB 以下のオフセット調整ができるようにしました。
測定結果を次に示します。

赤い線がフルスケール電流約 200 μA、青い線がフルスケール電流約 10 μA になるような設定での測定です。
赤い線も、青い線も、フルスケール電流値から数えて4つ下の測定値をピークとした山型になっているので、これは測定回路の特性によるものであろうと考えられます。
また、上述の変更を施したまま、XR2206 測定用に回路を戻して測定したのが下のグラフです。

赤い線が今回の測定、青い線が前回の測定で R1 を 22 kΩ にしてオフセットの影響を少なくして 50 μA 以下の範囲を測定したもの、緑の線が参考のために NJM4151 の今回の測定結果をプロットしたものです。
赤い線と青い線は、約 50 セント離れて同じような変化をしており、今回の測定は誤差が少ないだろうということが分かります。
ちなみに、各測定で「誤差ゼロ」の点は中央付近の測定値を適当に選んであり、誤差の絶対値に意味はありません。
電流が変化するとピッチが高くなる/低くなるという相対的な変化の傾向に意味があります。