PX-150 (2)

SX-150 のリニア VCO 部分の回路図を下に示します。
OP アンプによる積分器と、OP アンプによるヒステリシス・コンパレータを組み合わせた、リセット型 VCO に分類されるタイプです。

しかし、リセットは、よくある FET やバイポーラ・トランジスタコンデンサを「ショート」させて放電するタイプではなく、リワインド型のように入力電流とは逆方向の定電流を流して放電させるタイプです。
コンパレータのヒステリシスは、出力から正帰還を掛けることにより実現しており、そのスレシホールド電圧レベルは OP アンプ出力の出力の最大値 V_{\rm OH} と最小値 V_{\rm OL} に依存しています。
上側と下側のスレシホールド電圧を、のこぎり波の上限と下限の電圧を決定しているという意味から、それぞれ、V_{\rm top}V_{\rm bot} と名付けると、
\qquad V_{\rm top} = 2.5 + (10/22)\cdot(2.5 - V_{\rm OL})=3.64\,-\,0.455\cdot V_{\rm OL}
\qquad V_{\rm bot} = 2.5 - (10/22)\cdot(V_{\rm OH} - 2.5)=3.64\,-\,0.455\cdot V_{\rm OH}
となります。
リセット電流は、

IC2B 出力 (コンパレータ) → D12 → R23 (1 kΩ) → IC2A マイナス入力 (積分器) → C7 (0.01 μF) → IC2A 出力 (積分器)
という経路で流れます。
ダイオード D12 の作用により、IC2B 出力がアナログ・コモン電圧 (2.5 V) + V_{\rm F} 以上にならないと電流は流れません。
ダイオードの順方向電圧降下 (V_{\rm F}) は 0.6 〜 0.7 V 程度ですから、その電圧は 3.2 V 程度になります。
また、その電流値は
\qquad (V_{\rm OH} - 2.5 - 0.7) / 1000 = V_{\rm OH}\, -\, 3.2\; [\rm mA]
となります。
V_{\rm OH} が電源電圧 5 V まで振れるものとすると、5 - 3.2 = 1.8 [mA] が流れることになります。
この電流は IC2B 出力からソース (吐き出し) 方向に流れ出し、最終的には IC2A 出力にシンク (吸い込み) 方向に流れ込むことになります。
したがって、コンパレータとして使っている IC2B の OP アンプはソース電流能力が、積分器として使っている IC2A の OP アンプはシンク電流能力が要求されます。
専用のコンパレータとは違って、一般の OP アンプでは内部の位相補償のため、応答速度が遅くなっています。
汎用の OP アンプでは、スルーレートは良くて十数 V/μs、通常は 1 V/μs 程度になっています。
この遅れのため、のこぎり波は、本来の V_{\rm top} を超えた電圧、本来の V_{\rm bot} を下回る電圧まで振れることになり、直線性誤差につながります。
これまで述べたことを、OP アンプ出力波形を見る場合のポイントとしてまとめておきます。

  • V_{\rm OH}V_{\rm OL} → のこぎり波の振幅に関係
  • V_{\rm OH} の安定性 → リセット電流の安定性に関係
  • コンパレータとして使っている OP アンプの立ち上がり、立ち下り → 直線性誤差に関係