PX-150 (3)

今回からは、OP アンプの種類別に波形写真の説明をしていこうと思います。
まず最初に説明すべきなのは LM358 のグループなのですが、JRC 製の NJM2904 の波形写真の準備がまだできていないので後に回し、今回はその他のバイポーラ OP アンプのグループです。
バイポーラなので入力バイアス電流の問題が存在し、入力電流の小さい時、つまり低い周波数で直線性が悪くなります。
JRC 製の OP アンプが多くなっていますが、これは、現在は使わなくなった古い CD-ROM / CD-R ドライブの回路基板から外したチップを使っているからです。 (NJM2904, NJM2100, NJM2115, NJM3414)
まずは NS 製の LMV358 です。
LM358 の後継品種という位置付けになっており、LM358 とは型番に「V」が入っているかどうかの違いしかありませんが、実際の内容は、かなり違っています。
まず、BiCMOS プロセスで作られており、Vcc の絶対最大定格が 5.5 V なので、5 V 以下のシステムでしか使えません。
BiCMOS といっても、MOS FET は内部の回路と出力段の Vcc 側に PMOS が使われているだけで、入力段は PNP なので、入力バイアス電流の問題は存在しています。
出力段はクロスオーバー歪が出ないように改良されています。
LMV358 (NS)
今回調べたフルスイング出力 (レイル・ツー・レイル出力) をうたう OP アンプの中で、この LMV358 の V_{\rm OH} が最大でした。
写真を見ると、CH2 の振幅値が約 5.2 V と、5 V を超えていますが、これは 5 V 電源に使ったスイッチング方式の AC アダプタの出力電圧が、負荷が軽いせいもあって高かったからです。
スペック上のスルーレートは 1 V/μs ですが、波形写真からは約 2 V/μs 程度であることが読み取れます。
リワインド方式のリニア VCO の実験では、積分器出力波形に小さな「ツノ」が生えたようになっていましたが、この波形では「ツノ」は、あまり目立ちません。
それは、リセット信号を作り出すコンパレータが積分器と同じ種類の OP アンプであり、応答速度は同じなので、積分器の OP アンプが応答できないほどの高速の信号は、そもそも発生できないからです。
次は JRC 製の低電源電圧用と分類されている NJM2100 です。
フルスイング出力ではありません。
NJM2100 (JRC)
V_{\rm OL} は、ほぼ 0 V ですが、V_{\rm OH} は約 4.2 V です。 Vcc が 5.2 V であることを考慮すると、 Vcc - 1 [V] ということになります。
スペック上のスルーレートは 4 V/μs ですが、波形から読み取ると 5 V/μs 程度です。
次は NJM2115 で、NJM2100 の改良型です。 (5 V 以下の低電圧時にさらに低飽和、5 V 以上の高電圧時の発振安定性の向上)
NJM2115 (JRC)
波形を見ると、 NJM2100 とあまり変わりません。
電源電圧が 5 V 以下の場合と、5 V 以上の場合に特性が向上するので、電源電圧 5 V ではあまり変化が見られないのだと思います。
詳しく見ると、NJM2100 に比べて V_{\rm OH}スルーレートも少し悪くなっています。
次は NJM3414 で高出力電流 (70 mA) の OP アンプです。
NJM3414 (JRC)
V_{\rm OL} は少し浮いていますが、V_{\rm OH} は Vcc - 1 [V] 程度出ています。
スペック上のスルーレートは 1 V/μs で、波形写真からもその程度であることが読み取れます。
このグループの中で OP アンプを選ぶとすると、V_{\rm OH} 重視なら LMV358、スルーレート重視なら NJM2100、NJM2115 になります。