PX-150 (9)

リニア VCO 特性のリファレンスとして、原理的に誤差要因の少ないリワインド式の回路を構成して測定してみました。
回路図を下に示します。

コア・デバイスとしては LM331 あるいは NJM4151 を使用します。
電源電圧は 5 V なので、NJM4151 では推奨動作範囲外ですが、測定結果では LM331 での特性との間に、特に差はありませんでした。
PNP トランジスタを電流スイッチとして使っており、LM331/NJM4151 内蔵の定電流回路は使用していません。
PNP トランジスタまわりの点線で囲ってある部分は、抵抗内蔵型トランジスタ、いわゆる「デジトラ」で置き換えることができます。
リワインド電流は約 1 mA、リワインド期間は約 20 μs、のこぎり波の上端が約 3 V、下端が約 1 V の設定になっています。
リワインド電流を約 1 mA に下げたことにより、出力電流の小さい NJU7032 でも使えます。
オリジナルの SX-150 の VCO 回路の

  • Vcc (+5 V)
  • GND
  • 積分器のマイナス入力 (IC2 の 2 番ピン)
  • 積分器出力 (IC2 の 1 番ピン)
  • ゲート信号 (Q1 のコレクタ)

に接続するだけで、オリジナルの回路自体に手を加えることなしに、回路動作が置き換わるようにしてあります。
オリジナル回路のコンパレータのスレシホールド電圧、つまり、のこぎり波上端の電圧が約 3.5 V であるのに対し、この回路では約 3 V に選んであるので、もとの回路のコンパレータが反転する前にこの回路が動作を開始し、もとのコンパレータ出力は「L」に貼り付いたままになります。
点線で囲った 2.2 kΩ のプルアップ抵抗は NJM2904/NJM2902 の場合の波形改善のためで、他の OP アンプを使う場合には実装しません。
積分器にプルアップ抵抗付きの NJM2904 を使用した場合の波形写真を下に示します。

CH2 の波形は LM331 の 3 番ピン出力で、リワインド期間に「L」になります。
各種の OP アンプを差し替えて測定した結果のグラフを示します。
入力バイアス電流の大きいバイポーラの NJM2100 は測定から外し、CMOS OP アンプ NJU7032 を加えました。

低電流領域で NJM2904 の誤差量が増えているのは、入力バイアス電流の影響によるものと考えられます。
電流値が 25 μA と 250 μA の点では、OP アンプごとのバラつきが大きくなっていますが、それ以外の点では、どの OP アンプの測定値も同じような傾向を示しています。
これは、実際に変換特性がこのようなジグザグな変化をしているわけではなく、電流値を決めている抵抗の測定誤差によるものと考えられます。
±10 セントは、約±0.6 % の誤差量ですから、特別上等な機材を使っているわけではない測定としては、これくらいが限界なのかも知れません。
バイポーラ OP アンプの入力バイアス電流による低電流域での誤差増大のほかは、OP アンプによる大きな差もなく、大電流域で誤差が急増することもなく、広い範囲で良好な特性といえるでしょう。