PX-150 (10)

リニア VCO 部の各種の誤差要因を式で表現し、測定結果と比較してみました。
小電流領域での要因として1種、大電流領域での要因として2種を考慮しましたが、大電流領域での一致が良くありません。 おそらく、定式化しにくく考慮していない要因のためと思われます。
今回は、メカニズムが単純な小電流領域の誤差要因を取り上げます。
小電流領域で問題となるのは、積分器として使っている OP アンプの入力バイアス電流です。
FET 入力の OP アンプでは問題となりませんが、バイポーラ入力の OP アンプでは、入力トランジスタのベース電流が誤差要因となります。
グラウンド電位を入力範囲に含む単電源用のバイポーラ OP アンプでは、入力トランジスタとして PNP を使うので、ベース電流の向きは外に流れ出す向き (ソース電流) となります。

アンチログ回路の出力電流を I_{\rm A}、OP アンプのバイアス電流を I_{\rm B}積分コンデンサに流れる電流を I_{\rm integ} とすると、
\qquad I_{\rm integ} = I_{\rm A} - I_{\rm B}
となります。
誤差がない理想的な状態では I_{\rm integ} = I_{\rm A} となります。
周波数は積分電流に比例しますから、誤差のない理想周波数を f、誤差を含む実際の周波数を f^\prime とすると、両者の比、f^\prime / f は、
\qquad \qquad \frac{f^\prime}{f} = \frac{I_{\rm A} - I_{\rm B}}{I_{\rm A}} = 1 - \frac{I_{\rm B}}{I_{\rm A}}
となります。
この式を使って、NJM2100 の誤差のグラフと重ねてみたのが下の図です。

計算式の中の I_{\rm B} は約 100 nA の設定です。
これは NJM2100 の入力バイアス電流のスペックの標準値 100 nA と一致しています。
前にも述べたように、NJM2100 では小電流領域でも大電流領域でも誤差があるので、その中間の領域でも誤差はゼロにならないと考えられますが、データの処理の都合上、一番誤差の小さい測定点を誤差ゼロと見なしています。
そのため、式の値の方に 30 セントほど「ゲタ」をはかせて、グラフが良く一致するようにしてあります。