BBD コーラス (12) -- 逆数特性の VCO (7)

LM331 / NJM4151 の (OP アンプを使わない) 簡易型の V-to-F コンバータの構成は、

  • 周波数から電圧への変換回路 (F-to-V コンバータ) に
  • 負帰還をかけて
  • 入力電圧に追従させるもの

として捉えた方が理解しやすいので、まずは、簡易型 F-to-V コンバータの構成から説明します。
LM331 / NJM4151 を簡易型 F-to-V コンバータとして使う場合の回路を下に示します。

コンパレータの入力部の抵抗は、プラス側入力と、マイナス側入力とに適切なバイアス電圧を与えるものです。
周波数入力となる入力波形としては、矩形波を想定しており、入力部のコンデンサと、バイアス抵抗とで微分回路を構成して、矩形波のネガティブ・エッジでコンパレータが反転してワンショット回路のトリガが掛かるようになっています。
ここで、注意すべきことは、微分回路で発生させるトリガ・パルス幅がワンショット回路のパルス幅より小さくなるように設定することであり、それ以外のことは回路動作に影響を及ぼしません。
回路動作としては、ワンショット期間 (Trew) は定電流回路により、RL、CL の並列回路は一定の電流 Irew で充電され、それ以外の期間は CL に貯まった電荷が RL を通じて放電されることになります。
この放電期間の時定数は TL = RL • CL になります。
定電流回路の出力インピーダンスは、理想的には無限大ですから、充電期間でも時定数に寄与する抵抗値は RL に変わりはなく、放電時と同じ時定数 TL となります。
周波数入力として、一定の周波数 f、つまり、周期に換算すると Tcyc = 1/f の波形が連続して与えられるものとします。
抵抗 RLコンデンサ CL の「ホット側」の接続点の電圧を Vx(t) とすると、「定常状態」での電圧波形は、模式的に下の図のように表されます。

ワンショット期間の始めで Vx = Vbot だった電圧が、注入される電荷により電圧が上昇し、ワンショット期間の終わりで Vtop まで達します。
ワンショット期間が終わると、放電する一方となり、電圧は下降していき、1 サイクルの終わりに、元の Vbot まで戻ります。
「定常状態」なので、電圧の下限が Vbot、上限が Vtop となる、このサイクルをずっと繰り返します。
「過渡状態」では、サイクルの始めでの電圧と、サイクルの終わりでの電圧とは一致せず、定常状態へ向かって、電圧が徐々に変化していくことになります。
ワンショット期間、つまり、コンデンサ電荷が充電される期間の電圧変化の様子のグラフを下に示します。

時間 t = 0 でコンデンサ電荷がゼロで、電圧もゼロの状態から出発し、リワインド電流 Irew を常時流し続けた場合のグラフになっています。
電圧を式で表すと、
\qquad\qquad V_{\rm x1}(t) = V_{\rm rew} \,\cdot\, ( 1 \,-\, e^{-t/T_{\rm L}})
となります。
ここで、Vx1(t) の添え字「1」は「充電期間」に対する式であることを表現しています。
また、リワインド電圧 Vrew は、
\qquad\qquad V_{\rm rew} = I_{\rm rew} \,\cdot\, R_{\rm L}
であり、この回路で到達し得る最大の電圧です。
このグラフは、常時リワインド電流を流し続けた場合の電圧変化ですが、実際に電流を流すのは、ワンショット期間 Trew だけです。
グラフに示したように、どこかの電圧 Vbot から出発して、Trew 時間経過後の電圧 Vtop までに至る、「断片」を切り取ったものがワンショット期間の実際の波形となります。
一方、放電側のグラフは次のようになります。
t = 0 で、コンデンサは最大電圧 Vrew まで充電されているものとします。

電圧を式で表すと、
\qquad\qquad V_{\rm x2}(t) = V_{\rm rew} \,\cdot\,  e^{-t/T_{\rm L}}
となります。
ここで、Vx2(t) の添え字「2」は「放電期間」に対する式であることを表現しています。
これも、実際には、どこかの電圧 Vtop から出発して、(Tcyc - Trew) 時間経過後の電圧 Vbot までに至る、「断片」を切り取ったものが放電期間の波形となります。
次回以降は、さらに計算を進め、Vx の時間平均を求めます。