アナログシンセの VCO ブロック (28) -- リニア VCO 回路(19)

OP アンプを差し替えて波形を観測した写真の続きです。
OP アンプの高域特性が悪いために「ツノ」が生じると述べてきましたが、高域特性の良いビデオ信号用 OP アンプを使うとどうなるかを次に示します。
下の写真は CMOS OP アンプで現在は廃品種の MC14577 の場合です。

見てわかるように、「ツノ」はありません。
リワインド・パルスのエッジ部分で「気絶」することもなく、常に正常動作していることが分かります。
この手のビデオ信号用 OP アンプは、入力信号を 75 Ω 終端で受け、6 dB の同相増幅をし、75 Ω 負荷のドライブをすると言った使い方が一般的です。
そのため、汎用 OP アンプでは必ず規定されているオフセット電圧などの特性については、MC14577 では、スペックにその項目すらありません。
したがって、アンチログ・アンプの入力部のサミング・アンプや、ノイズが気になるオーディオ増幅などには使えませんが、今回のような電流入力の積分器としての用途には使えます。
欠点としては電流を喰いすぎる (25 〜 40 mA) ことです。 まあ、ビデオ帯域で 75 Ω ドライブのためには仕方がないことです。
次はアンバッファド・タイプ、つまりトランジスタが1段だけの CMOS インバータ 74HCU04 を積分器として使った場合の波形です。

トランジスタ1段増幅のためゲインが低いので、リワインド期間でレベルが浮いていますが、「ツノ」は生じていないことが分かります。
ゲインが低いため、ランプ波形の緩斜辺が完全な直線にならず、少しゆがんでいるのが下の写真から分かります。

一般的な OP アンプと違い、差動増幅ではないので、温度変化などによりバイアス点が変動すると、今回の回路ではリワインド電流の変動につながってしまうので、ちゃんとした定電流回路を組む必要があります。