アナログシンセの VCO ブロック (27) -- リニア VCO 回路(18)

リワインド方式のリニア VCO 回路の積分器に使っている OP アンプを、手持ちの何種類かに差し替えて波形を観測した写真を掲載します。
自動化、精密化した測定方法については、まだ実現していないので、特性の測定は行っていません。
まず、最初は、前回の測定の対象だった LMV358 の場合です。

下側のトレースは、リワインド期間を決めているモノマルチの Q 出力 (HC221 の 5 番ピン) で、パルス幅は 20 μs にちょっと欠けるくらいです。
真ん中のトレースは、ランプ波 (のこぎり波) 出力で OP アンプ出力 (1 番ピン) を見ています。
画面左右の水平線に見える部分は、ランプ波形の緩斜辺で、わずかに右上がりになっています。
画面中央の右下がりの部分がリワインド期間で、リワインド期間の初めと終わりに「ツノ」が生えたように見えています。
この「ツノ」は OP アンプの周波数特性およびスルーレート制限から来るものです。
この回路では、リワインド期間に定電流を注入するのに、正常動作している OP アンプでは、プラス入力端子とマイナス入力端子の間にバーチャル・ショートが成立しているのを利用しています。
プラス入力端子に TL431 で生成した 2.5 V のアナログ・コモン電圧を接続し、マイナス入力端子側には 820 Ω とシリコン・ダイオードを介してモノマルチの Q 出力を接続しています。
リワインド期間では Q 出力が +5 V となるので、
(5 - 2.5 - ダイオード順方向電圧)
の約 1.9 V の電圧が 820 Ω の抵抗の両端にかかり、約 2.3 mA の定電流が OP アンプのマイナス入力端子に接続されている積分コンデンサ (223 = 0.022 μF) に流れ込むことになります。
周波数が高い領域では、OP アンプのゲインおよび応答が十分でなく、フィードバックによる入力端子間のバーチャル・ショートや、出力インピーダンスを低下させる作用が十分に行われなくなります。
つまり、周波数の高い領域では、OP アンプの内部状態はほとんど変化していないのに、入出力端子だけが外部からドライブされ、あたかも OP アンプが「気絶」したかのように、本来はフィードバックのためにある受動素子を通じて、信号が入力側から出力側へ「素通り」するような現象が起こります。
「ツノ」の前半は、この「素通り」により、リワインド・パルスのエッジ部分が出力に現れたものです。
「ツノ」の後半は、OP アンプが正常動作に戻る過程を見ていることになります。
「LMV358」の場合は、後で示す「LM358」と違って、比較的に素直な応答を示しています。
次は CMOS OP アンプの LMC662 の場合です。

「ツノ」の後半部分で少し振動的になっているのが見られますが、LMV358 と同様に比較的に素直な応答です。