アナログシンセの VCO ブロック (26) -- リニア VCO 回路(17)

アナログシンセ回路の話題としては数ヶ月ぶりになりますが、急に思い立って、リワインド方式のリニア VCO 回路の実験をしてみました。
実験回路を下に示します。

点線で囲った部分がリニア VCO 部です。
リワインド方式では、コンパレータ、モノマルチ、定電流回路などの構成要素が必要ですが、モノマルチ IC の 74HC123、74HC221 ではトリガ入力がシュミット・トリガになっているのを利用して、コンパレータを省略しました。
スレシホールド電圧は 1/2 Vdd 近辺で、自由には選べませんが、抵抗分圧して電圧を高くなる方向にシフトすることはできます。
モノマルチのパルス幅は約 20 μs に選んでいます。
モノマルチの Q 出力から 820 Ωとシリコン・ダイオードを介して OP アンプのマイナス入力にフィードバックしているのがリワインド用の (簡易) 定電流源です。
リワインド電流は約 2 mA です。
測定は上の回路をブレッドボードに組み、入力電流を安物のディジタル・テスタ (具体的には秋月のP-10) で読み取りながら手動で調節し、発振周波数を周波数カウンタの周期測定モードで測定するという原始的な方法で行っています。
最初は OP アンプに LM358 を使用していたのですが、のこぎり波の波形が悪いので LMV358 に変えました。
入力電流の 1 μA から 1 mA 程度までの変化で発振周波数が 20 Hz から 20 kHz 程度になる回路定数を選んであり、入力電流をほぼ 1/3 オクターブ間隔で変化させてデータを取っています。
入力電流と発振周波数のグラフを描いてみました。

目でみた限りでは、直線からのズレは詳しくは分かりません。
理想的な変換直線からのズレをパーセント単位で表してプロットすると次のグラフのようになります。

入力電流が 20 μA 程度以上の 5 〜 6 オクターブについては、良好な直線性が得られています。
10 μA 程度以下では、特に電流の少ない方で直線性が悪くなっています。
回路的に電流の小さい領域での誤差原因としては、OP アンプの入力バイアス電流と、ダイオードの漏れ電流があります。
LMV358 は PNP トランジスタ入力なので、ベース電流としてソース方向に代表値で 15 nA 程度のバイアス電流があり、シリコン・ダイオードの漏れ電流は、逆バイアス電圧数ボルトで数 nA 程度になり、これもソース方向に流れます。
両者ともソース方向なので、積分コンデンサに流れる電流は減少し、入力電流 1 μA に対しては -2 % 程度の誤差を生じます。
また、ディジタル・テスタは 399.9 μA フルスケールのレンジで測定しているので、常に最下位ディジットに 1 程度の誤差が付きまとうというディジタル表示の宿命から、入力電流 1 μA で 10 % 程度、10 μA で 1 % 程度の測定誤差が生じます。
低電流領域では、測定誤差の影響のほうが大きく、本来の回路的な要因による誤差が隠された状態と考えられます。
もうちょっとまともな測定方法に変更して、再測定をしたいと考えています。
回路の説明、問題点、出力波形、OP アンプを変えた場合の結果、精密化、自動化した測定方法などは、次回以降の記事で触れたいと思います。