LPC810M021FN8 (16) -- アナログ・コンパレータ (1)

LPC810 では、アナログ・コンパレータの入出力をピンに出すことができ、

の「単体」のコンパレータとして扱えます。
出力に関してはスイッチ・マトリクスで任意のピンに割り当てられますが、入力に関しては 8 番ピンの「ACMP_I1」と 5 番ピンの「ACMP_I2」に固定されます。
アナログ・コンパレータを動作させるためには初期化のためのプログラムが必要ですが、コンパレータについての詳しい説明と、プログラムについては次回以降の記事に回します。
今回は、コンパレータの特性をアナログ的に測定した結果を示します。
具体的には、「リング・オシレータ」構成でコンパレータの伝達遅延時間を測定してみました。
測定回路を下に示します。

電圧可変型 3 端子レギュレータで電源電圧を変化させながらリング・オシレータの発振周波数を測定し、その逆数の 1/2 を平均伝達遅延時間とします。
コンパレータの非反転入力側の電圧はトリマによって電源電圧に対する比率を調整可能にしています。
結果のグラフを下に示します。

リング・オシレータとして、ロジック・レベルのコンパレータ出力を直接に反転入力に戻しているので、「レイル・ツー・レイル」の電圧振幅でコンパレータ入力はドライブされています。
この測定では、コンパレータ非反転入力電圧は電源電圧の半分程度に設定してあります。
電源電圧が 2.8 V 程度の時に平均伝達遅延時間が 90 ns 程度 (発振周波数は 5.6 MHz 程度) となっています。
電源電圧が高いほどスピードは速くなるはずですが、中間の電圧で一番スピードが速くなっているのは「オーバードライブ量」の影響のためと思われます。
非反転入力に加えるコモン電圧を基準に、反転入力にはプラス方向に電源レイル、マイナス方向にグラウンド・レイルの電圧が加わります。
この「オーバードライブ量」は、コモン電圧に対し、

  • コモン電圧が電源電圧の 1/2 の場合に正負側が等しい
  • コモン電圧が電源側に近づくと正側のオーバードライブ量が減る
  • コモン電圧がグラウンド側に近づくと負側のオーバードライブ量が減る

という変化をします。
実際にオーバードライブ量が減ると、減った側の伝達遅延時間も長くなります。
したがって、与えられた電源電圧に対して平均伝達遅延時間が最小になるコモン電圧の値が存在することになります。
そしてコンパレータ回路の特性により、最適コモン電圧は電源電圧の 1/2 ぴったりであるとは限らないので、上の測定の場合には電源電圧 2.8 V 付近に対してコモン電圧の条件が良かったものと思われます。