MS-20 タイプの VCF (7)

ミューティング用トランジスタを使って作成した MS-20 前期型の VCF 回路の周波数特性を測定してみました。
回路図を再掲します。

ミューティング用トランジスタは、信号のパスに 2 個、アンチログ回路に 1 個の合計 3 個を使いますが、HN1C03F は 2 素子入りなので、2 バッケージ必要になります。
信号のパスの 2 個を同一パッケージにした方が製作上は便利なのですが、少しでもアンチログ回路との熱的な結合を良くするため、信号のパスのトランジスタのうちの 1 個とアンチログ回路の 1 個を同一パッケージとし、信号のパスの残り 1 個は別パッケージとしました。
アンチログ回路のバイアスを 1 μA にすると ON 抵抗が低くなりすぎるため、電流を 0.3 μA 程度に絞ってあります。
手持ちでは 4.7 MΩ までしかないので、3 本直列にして 14 MΩ 相当にして使っています。
本来は、もっと絞って 0.1 μA 以下にしたいのですが、そうすると抵抗値が 47 MΩ 以上と非常に大きくなり、漏れ電流の心配とか、単体の抵抗では高価になるなどの問題があります。
正負両電源や、単一電源でもアナログコモン電圧を使う方式で、CV をアナログコモン電圧より負側に引っ張れば、出力側にはアンチログの設定電流よりも少ない電流を流せるので、その方がいいかも知れません。
SPICE シミュレーションのように、コンデンサを両方とも 104 (0.1 μF) にすると、レゾナンスを上げても発振までいかなかったので、一方を 473 (0.047 μF) にしてあります。
シミュレーションでは、CV を変えてカットオフ周波数を変えても、フィルタのピークレベルにはあまり変化がなかったのですが、実際の回路では、高域でピークレベルが下がり、低域で発振状態でもカットオフ周波数を上げていくと発振が停止する状態でした。
オリジナルの回路で、フィードバックの分圧抵抗に並列にコンデンサが接続されているのは、おそらく高域でのピーク低下を補正するためのものと考えられます。
上の回路図では 680 Ω に並列に接続してあるコンデンサがそれに相当しますが、値が入っていないことから分かる通り、まだ詳しく検討しておらず、実験はこのコンデンサがない状態で行っています。
また、レゾナンスをあげていって、ピークが 10 dB 程度を超えると発振状態になってしまい、安定に 20 dB とかのピークレベルを得ることはできませんでした。
WaveGene / WaveSpectra で周波数特性を測定した結果を下に示します。(下側のウィンドウ)
WaveGene で 10 Hz から 47 kHz までを 180 秒かけてリニア・スイープするサイン波を発生させ、96 kHz サンプリングの WaveSpectra で ピークホールドする方法で観測しています。

赤の線はカットオフ周波数を 100 Hz 付近に調整したもので、青の線はカットオフ周波数を 10 kHz 程度に調整したものです。
発振直前までレゾナンスを上げていますが、前述のように、補正していないのでカットオフ周波数によりボリウムの設定位置は変化しています。
20 Hz 付近の特性が波打って見えるのは、リニアスイープなので低域では相対的に周波数の変化のスピードが速くなる影響で、測定上の問題であり、実際の特性が波打っているわけではありません。
上側のウィンドウには 31.5 Hz の矩形波に対する時間波形を表示しています。 周波数が低いので「サグ」が出ています。
矩形波の上辺側と下辺側で「リンギング」の減衰時間が異なっている現象が見られます。
「論文」の波形とは上下が逆になっていますが、これは使用しているサウンド入力ハードウェアでは極性が反転しているためです。
なお、下のウィンドウの周波数特性は、スイープ信号を観測してセーブしておいたスペクトル解析データをロードして表示しており、リアルタイムで見ているわけではありません。
上のウィンドウの時間波形はリアルタイムで見ており、上下のウィンドウの表示に直接の関係はありません。
本来は矩形波に対する時間波形を別個にオシロで観測して波形写真を撮るべきものを、その手間を省略しただけです。