PSoC1 (5) --- スイッチトキャパシタ・フィルタ (5)

 SC ブロックを「フィルタ」として使うために特化した「ユーザモジュール」として、下の 6 種が用意されています。

  • BPF2 (2 次バンドパス・フィルタ)
  • BPF4 (4 次バンドパス・フィルタ)
  • LPF2 (2 次ローパス・フィルタ)
  • LPF4 (4 次ローパス・フィルタ)
  • ELPF2 (2 次楕円ローパス・フィルタ)
  • ELPF4 (4 次楕円ローパス・フィルタ)

 2 次のフィルタは ASC + ASD のペアを 1 組使い、4 次のフィルタは ASC + ASD のペアを 2 組使います。
 SC ブロック間の接続は自動的に行われ、ユーザは入力の接続および出力の接続だけを指定すればすみます。
 キャパシタの値の設定も、「ウィザード」を利用すれば、周波数応答のグラフを見ながら調節することができます。
 フィルタの特性として HPF が含まれていませんが、これは、サンプル値系のシステムであるスイッチトキャパシタ・フィルタでは、LPF であるアンチ・エイリアス・フィルタが必須であり、その遮断特性が HPF の通過域にかぶるために、HPF 単独での特性を追及してもあまり意味がないためと思われます。
 ELPF2 / ELPF4 は「楕円」と名付けられていますが、ミニマックス近似の意味で最適な「楕円フィルタ」を設計してくれるわけではなく、阻止域に任意に周波数を選べる「ノッチ」を指定可能という程度のものです。
 SC ブロックの ACap / BCap / CCap は 32 段階でしか指定できず、「最適」なフィルタで必要とされる f0 や Q の分解能を満たせません。
 そのため、実現できる特性と理想的な計算値との乖離が大きくなってしまうので、手動で周波数特性のグラフを見ながら調整したほうが実用的であると判断したものと思われます。
 ELPF4 を ASC12 / ASD13 / ASD22 / ASC23 に配置した場合のチップ・エディタの表示を下に示します。

 ウィザードの設定画面を次に示します。 (図をクリックすると拡大します。)

psoc1_ELPF4_wiz_small.jpg

 周波数特性の青色のトレースが理論値「Nominal」で、オレンジ色のトレース「Expected」が予想される実際の特性です。
 5 kHz 付近のノッチは、かなりズレています。
 通過域のタイプを「バタワース」に選んでいるので、実際は「逆チェビシェフ・フィルタ」になっています。
 「コーナー周波数」f0 でのゲインが -3 dB ではなく、-6 dB 程度になっていますが、これは伝達関数の分母をバタワース特性として設計し、分子のノッチ特性の影響を考慮していないせいだと思われます。
 ノッチ周波数をずっと高い方に設定すると、f0 でのゲインは -3 dB に近づきます。
 実際の特性を WaveGene + WaveSpectra のリニア周波数スイープ + ピーク・ホールドで求めた結果を下に示します。

 ウィザードの「Expected」の結果と良く一致しています。
 ちなみに、ウィザードで通過域を 0.1 dB リプルのチェビシェフ特性とした場合の結果を下に示します。
 0.1 dB のリプルどころではなく、2 ~ 3 dB のピークを生じて、全体的に理論値からズレています。