3.3 V ノイズジェネレータ (5)

今回は、前回の結果に対する補足です。
まず、ラグ・リード・フィルタでは、振幅は (広義) 単調減少なので、微係数は常にゼロかマイナスであり、正になることはありません。
しかし、前回求めた G^\prime(0) の式は、
\qquad\qquad G^\prime(0) = 20 \cdot\tanh\left(\ln(R_2)\right)
であり、見かけ上は、式にマイナス符号が含まれていません。
しかし、これは R_2 \,< \,1 という条件を仮定したので、その対数を求めると、当然
\qquad\qquad \ln(R_2) \,<\, 0
つまり、常にこの因子は「負」になりますから、上の式の計算結果の数値も当然マイナスになり、矛盾しているわけではありません。
さらに、R_2 が小さく R_1 が大きく、高低平坦部が離れていて、遷移部が広い場合を考えます。
その極限として、R_2 \to 0 の場合には、
\qquad\qquad \lim_{\small R_2 \to 0} \tanh\left(\ln(R_2)\right) = \tanh(-\infty) = -1
と求まりますから、ゲインのスロープは最大 -20 dB/dec (-6 dB/oct) になり、-20 dB/dec より急になることはありません。 これは、RC 1 次フィルタの限界であり、当然なことです。
次に、ラグ・リード・フィルタの特性の

  • 低域の平坦部
  • 遷移部
  • 高域の平坦部

をそれぞれ直線で近似して表したグラフと、本来の特性との関係を下に示します。

このグラフ自体は、-10 dB/dec (-3 dB/oct) の特性のものを作図してありますが、各所の値を示す式は一般の場合のものを示してあります。
赤い線がラグ・リード・フィルタの実際の特性で、青い線が折れ線近似です。
欲しいのは -3 dB/oct (-10 dB/dec) で直線的に伸びるゲイン特性ですから、折れ線近似の特性は (フィルタ 1 段あたりの) 理想特性であるとも言えます。
まず、中心 (角) 周波数 x = 0\omega=1 でのゲインは、リニア値では
\qquad\qquad R_2 = 1/\sqrt{3} = 0.577...
dB 値では、
 \qquad\qquad 20 \cdot \log_{10}(R_2) = 10 \cdot \log_{10}(R_2^2) = -10 \cdot \log_{10}(3) = -4.770...\qquad [\rm dB]
となります。
高域の平坦部のゲインは、リニア値では、
\qquad\qquad R_2^2 = 1/3 = 0.333...
dB 値では、
 \qquad\qquad 40 \cdot \log_{10}(R_2) = 20 \cdot \log_{10}(R_2^2) = -20 \cdot \log_{10}(3) = -9.542...\qquad [\rm dB]
となります。
また、折れ線近似の遷移部と高域の平坦部との境界となる折れ点の x 座標と角周波数 \omega は、
\qquad\qquad x = -2 \cdot \log_{10}(R_2) = \log_{10}(1/R_2^2) = \log_{10}(3) = 0.477...
\qquad\qquad \omega = 10^x = \left(\frac{1}{R_2}\right)^2 = 3
となります。
低域側の平坦部と遷移部との交点の x 座標は高域側の値の符号をマイナスにしたもの、\omega は高域側の値の逆数となります。
-10 dB/dec (-3 dB/oct) のフィルタの場合、低域側、高域側、それぞれの交点の角周波数は 1/3 および 3 となりますから、遷移部の幅を低域と高域の各周波数の比として計算すると
\qquad\qquad \frac{\,3\,}{\frac{1}{\,3\,}} = 3^2 =9
となり、1 ディケードである「10」に少し足りない結果となっています。
また、交点の位置での、実際のゲイン特性と -3 dB/oct の理想特性との差は約 1 dB となっています。