OTA/VCA/PGA を使用した 2 次特性 VCF (6)

これまで OTA の SPICE マクロ・モデルとして、NS 社の web サイトからダウンロードできる LM13700 のモデルを使ってきましたが、今回 JRC (新日本無線) の web サイトからダウンロードできる NJM13600 の SPICE マクロ・モデルを使ってみてうまく行ったので報告します。
NS 社のモデルは、カレント・ミラーの機能に電流制御電流源を使った「ビヘイビア」記述のものでしたが、JRC のモデルは、トランジスタ・レベルで内部回路を記述しています。
LTSpice で試したシミュレーションは、まだ AC 解析だけですが、NS のモデルよりも動かしやすいという印象を受けました。
JRC のモデルは、PSpice を対象としており、他のシミュレータでの動作は保証していませんが、テキスト形式のネットリストに一切変更を加えずに LTSpice 上で動作させることができました。
モデル・ファイルは、OP アンプを数十個分まとめて一個の zip ファイルにしてあり、解凍すると各 OP アンプのモデルが入ったフォルダが現れます。
NJM13600 用のモデル・ファイルは、フォルダ「NJM13600」の下にあります。
拡張子が「.OLB」となっているのは PSpice 用のファイルで、他のシミュレータでは使えません。
拡張子が「.lib」となっている「njm13600.lib」はテキスト形式で SPICE ネットリストを記述したもので、LTSpice でも一切の変更なしで使用できました。
サブサーキット名「13600」が OTA 1 回路分のモデルとなっています。
16 ピン・パッケージに 2 回路分を収容した実際のデバイスとピンの並びを同じにしたモデルも含まれており、サブサーキット名はデバイス名と同じ「NJM13600」になっています。
サブサーキット「13600」の SPICE ネットリストを LTSpice の回路図に書き起こしたものを下に示します。

入力差動ペアのオフセット電圧や、バイアス電流の不揃いなどの記述が加わっている以外は、内部等価回路通りの回路となっています。
JRC のデータシートに掲載されている内部等価回路にはデバイスの番号は記載されていません。
もちろん、このモデルと NS のデータシートの内部等価回路のデバイス番号の振りかたとは違っています。
NJM13700 のモデルは提供されていませんが、NJM13600 と NJM13700 との違いはNPN ダーリントン・バッファの 1 段目の負荷電流を OTA 部のバイアス電流に連動させるかどうかだけなので、変更を加えて NJM13700 として動作させることは簡単です。
具体的には QB1 の記述 (njm13600.lib の 37 行目) をコメント・アウトすればダーリントン・バッファ部は独立となり、 NJM13700 の構成となります。
OTA のモデルを NJM13600 に変えた OTA 2 個による biquad 回路の LTSpice シミュレーション回路入力を下に示します。

NS のモデルの場合と違って、アナログ・コモン電圧を 2 種用意する必要もありませんし、積分コンデンサに抱かせる高抵抗も 1 GΩ 程度まで大きくすることができました。
結果のグラフ自体は LM13700 の場合と同様なので掲載は省略します。