シュトレーレ回路 (2) -- シュトレーレ・アッテネータ (1)

OP アンプと可変抵抗を使用した反転増幅回路で、回路定数の決定に「シュトレーレ近似」を使い、6 dB の範囲内でゲインを連続可変可能な回路を、ここでは「シュトレーレ・アッテネータ」と呼ぶことにします。
反転増幅回路ですから、「アッテネータ」といっても減衰一方ではなく、-3 dB から +3 dB までの範囲でゲインが変化します。
下の図のように、固定抵抗 R1、R2、可変抵抗 R3 を組み合わせて可変ゲイン反転増幅回路を構成します。

回転角と抵抗値がリニアに比例する、Bカーブの可変抵抗器のスライダ (2 番端子) の抵抗体上の相対位置を x で表すことにします。
x = 0 は、つまみを反時計回り一杯に回し切った状態で、スライダは 1 番端子と接触する位置にあるものとします。
同様に x = 1 は、つまみを時計回り一杯に回し切った状態で、スライダは 3 番端子と接触する位置にあるものとします。
x = 0.5 は、つまみは中間の状態で、1 - 2 間の抵抗値と 3 - 2 間の抵抗値が等しくなるものとします。
この x と、可変抵抗全体の抵抗値 R3 を使って 1 番端子と 2 番端子の間の抵抗値を表現すると、
\qquad \qquad R_3\, \cdot\, x
となり、同様に 1 番端子と 3 番端子の間の抵抗値は
\qquad \qquad R_3\, \cdot \,(1 - x)
と表されます。
これから反転増幅回路のゲイン G を求めると、
\qquad \qquad G = - \frac{R_2 + R_3 \, \cdot \, x}{R_1 + R_3 \, \cdot \, (1 - x)} = - \frac{R_2 + R_3 \,\cdot\, x}{(R_1 + R_3) - R_3\,\cdot\, x}
となります。
一方、シュトレーレの近似式を変形していくと、
\qquad \qquad \frac{24 + 10 \cdot x }{24- 7\cdot x} = \left( \frac{10}{7} \right) \cdot \left ( \frac{24/10 + x}{24/7 - x}\right) = \left( \frac{10}{7} \right) \cdot \left ( \frac{(24/10)\cdot R_3 + R_3\,\cdot\,x}{(24/7)\cdot R_3 - R_3\,\cdot\,x}\right)
と求められます。
係数 (10/7) は別にして、前出のゲインの式と比べると、
 \qquad \qquad \begin{eqnarray}R_2 &=& (24/10)\cdot R_3\\ &=& 2.4 \cdot R_3\end{eqnarray}
\qquad \qquad \begin{eqnarray}(R_1 + R_3) &=& (24/7)\cdot R_3 \\ R_1 &=& (24/7 - 1)\cdot R_3  \\&=& (17/7)\cdot R_3 \\&=& 2.42857 \cdot R_3\end{eqnarray}
となります。
つまり、フィードバック側の固定抵抗 R2 は R3 の 2.4 倍、入力側の固定抵抗 R1 は R3 の約 2.43 倍に選べばシュトレーレの近似式を満足します。
可変抵抗 R3 を 10 kΩ とすると、次の図のように R1 = 24.3 kΩ、R2 = 24 kΩ です。

回路は簡単で、製作も容易ですが、可変抵抗の「x」つまり回転角を高精度に求めることが難しいので、実際に回路を作る前に SPICE シミュレーションで確かめてみました。
下は LTSpice の回路図入力です。 OP アンプ部は電圧制御電流源 (G) で代用してあります。

抵抗値がゼロになると怒られるので、R1, R2 の分も取り込んで可変抵抗を定義してあります。
結果の誤差のグラフを次に示します。

誤差が大きくなるのを覚悟で、R1 を 24 kΩ に変えた場合の結果を下に示します。