アナログシンセの VCO ブロック (13) -- リニア VCO 回路(8)

今度は、本当に (C) ワンショット・コンパレータを使っている Doepfer A-110 VCO です。

OP アンプ用の電源は ±12 V で、3端子レギュレータで作った +10 V がタイミング・コンデンサ用の電源として供給されています。
アンチログ回路は、オーブンで一定温度に保たれるタイプなので、アンチログのトランジスタのコレクタ損失を下げる必要はなく、何も対策されていません。
まず、コンデンサ放電用トランジスタは PNP ですから、+10 V へドライブするとカットオフ、マイナス方向へドライブするとオンとなるので、必要なリセットパルスは負極性で、前に説明したワンショット・コンパレータの例と同じです。
ただし、直接積分型ですから、コンデンサの電圧はリセットで +10 V に引き戻され、充電されるにつれ電圧が下がることになります。
前の説明とは逆なので、コンデンサ電圧(をバッファしたもの)はコンパレータのプラス入力側に加えられていますが、ワンショットとしての動作は同様です。
ワンショットのパルス幅は、計算上は 0.7 us 程度になりますが、実際のリセットパルス幅は、OP アンプのスルーレート制限などの要素により変わります。
コンパレータのマイナス入力端子側の比較電圧は 0 V です。
したがって、のこぎり波は 0 V 〜 10 V の振動を繰り返すことになります。
P5 の 25 kΩ トリマは、前に説明した高域補償用です。
masa921 さんの Web サイトで、この VCO を原型にした VCO が公開されています。
正直言って、私は「Doepfer って何?」というレベルなので、原型の回路図は今まで見たことがありませんでした。 今回、ワンショット・コンパレータの例ということで Doepfer の回路に当たって、masa921 さんの回路図を見て思っていた疑問が解けました。
それは、専用コンパレータ IC を使わずに、なぜ OP アンプを使っているのかということなのですが、原型の回路がそうしているからというのが結論でした。
ただ、原型の回路に当たって、新たな疑問がひとつ生じました。 それは、TL064 は低消費電力ですが、スルーレートが標準値で 3.5 V/us と、TL084 や TL074 の 13 V/us に比べて低いことです。
この部分の速度が遅くても、「音」の良し悪しには関係しないのならば、高速なコンパレータ IC を使う必要性はないことになりますが、本当にそうなのかどうかは分かりません。