アナログシンセの VCO ブロック (11) -- リニア VCO 回路(6)

ここからは、いくつかの実際の回路に触れます。
まず、(D)の SCR 相当の回路を使っている KORG MS-20 の VCO 部です。

左図は MS-20 の VCO 部から説明に必要な最小限の部分だけを抜き出したものです。
アンチログ出力は 2SK30A によるカスコード回路に接続されています。
FET なのでベース電流による目減りもなく、電流はそのままリニア VCO 部に伝えられます。
指定されている 2SK30A の IDSS ランクは O (Orange) で、その範囲は 0.6 〜 1.4 mA となっています。
O ランクでは、ソース電圧は 1V 程度以下になり、アンチログのトランジスタのコレクタ損失は低くなります。
リニア VCO 部は、1PNP / 2NPN / 1Di による SCR 相当の回路と、2SK30A による FET ソースフォロアを組み合わせたシンプルな回路となっています。
ここで、タイミング・コンデンサ C2 の一端を電源側に接続せず、GND に落としても回路の動作はします。 しかし、その場合、リセット時の放電電流の流れる経路が、
+15V → Q4 → D4 → Q3 → C2 → GND
という電源を巻き込んだパスになるので、ノイズが電源を通じて他の回路に影響を与える恐れがあります。
この回路図のように、放電電流が
C2 → Q4 → D4 → Q3 → C2
という小さいループを流れるようになっていると、電源に与えるノイズの影響を小さくできます。
一方、AC 的には C2 を通じて電源と FET バッファの入力がつながることになりますから、電源に乗っているノイズが素通しになります。
C3 と C4 で、かなり厳重にデカップリングしているのは、リセット電流によるノイズを抑えるほかに、電源ノイズを抑える意味合いもあると思います。