3.3 V ノイズジェネレータ (9)

今回は、前回作成した -3 dB/oct (-10 dB/dec) フィルタを、生成多項式 3 を使った m-系列ノイズ・ジェネレータにつないで測定してみました。
周波数特性を観測するだけではなく、録音したノイズの .wav ファイルをプログラムで処理して、振幅方向の統計的性質も調べてみました。
次回で説明しますが、ホワイトノイズ出力のパワーと、ピンクノイズ出力のパワーとを一致させるために、ピンクノイズ・フィルタのゲインの設定を変更しました。
具体的には、OP アンプ 2 の入力部の抵抗を 200 kΩ から 12 kΩ に変更し、周波数 10 Hz で約 24 dB のゲインを持たせました。
これは、ピンクノイズ・フィルタのゲインが 0 dB になる周波数は約 2.6 kHz であるとも表現できます。
いつものように、WaveSpectra で周波数特性を観測した結果を下に示します。

録音のサンプリング周波数は 96 kHz で、アベレージ機能で 300 回分の測定の平均値を表示させています。
青色の線がホワイトノイズ出力、赤色の線がピンクノイズ出力です。
両者がクロスする点の周波数が 2 kHz と 3 kHz の間にあることが読み取れます。
また、青色のホワイトノイズ出力のスペクトルが平坦ではなく、少し右上がりに見えますが、これは、おそらく FFT 計算でリニアな周波数間隔で得られた周波数応答を log スケール周波数で表示する際のデータの平均化処理に起因する、(データそのものではなく) 表示だけの問題と思われます。
実際、下のグラフのように、周波数をリニアスケールで表示すると、24 kHz LPF の帯域内のレベルはフラットになっているのが分かります。

m-系列ノイズ出力自体は、振幅方向には一様分布であると見なせますが、LPF をかけて帯域制限する操作はノイズの出力系列の時間平均と解釈できるので、中心極限定理により、フィルタ後のノイズ出力の振幅方向の分布は正規分布するものと見なせます。
下に、24 kHz LPF 通過後のホワイトノイズ出力を 96 kHz サンプリング、16 ビットで約 30 秒間録音した .wav ファイルをプログラムで処理して求めた、振幅方向のヒストグラムを示します。

横軸は 16 ビット整数である振幅を -1 〜 +1 の実数として表現したものです。
256 個のコードをひとつの階級として、16 ビット・データ全体では 256 個の階級に分割して度数をカウントしました。
グラフの見た目では正規分布に従っているように思えます。
もっとはっきりと正規分布との適合度合いを見るために、正規 QQ プロット (Normal Quantile-Quantile Plot) を描いてみました。
QQ プロットとは、分布の累積度数 (累積確率) を媒介として、ふたつの分布の「分位数」 (quantile) を x 座標、y 座標の値としてプロットしたもので、ふたつの分布が同種のものであれば、平均値や分散の違いにかかわらず、グラフが「直線」として表示されるという特徴があります。
その一方の分布を正規分布としたのが「正規 QQ プロット」です。

青色の線がホワイトノイズ出力で、赤色の線がピンクノイズ出力です。
縦軸が正規確率の分位数で、平均値を 0 として標準偏差 (σ) 単位で表示しています。
ホワイトノイズ出力も、ピンクノイズ出力も 3 σ 程度までは直線的であり、正規分布と見なせます。
3 σ 以上の部分では、グラフの勾配が急になる、つまり正規分布で期待される度数より頻度が少なく、分布の「裾」の部分が「痩せている」形となっています。
3 σ 程度まではホワイトノイズ出力とピンクノイズ出力のグラフは重なっており、両者の分散は等しいと見なせますから、両者の「パワー」も等しいと見なせます。
また、「1 σ = 実効値」と解釈できますから、「クレストファクター」、つまりピーク値と実効値との比は、グラフの縦軸方向の最大値、最小値を読んで、4.7 程度であることが分かります。