3.3 V ノイズジェネレータ (8)

これまで述べて来たのは、各段のラグ・リード・フィルタをバッファを介して接続したり、「低域」と「高域」のように中心周波数の比が約 80 となって互いに影響しにくい状態のラグ・リードをパッシブの状態で組み合わせる方法でした。
この方法には、(各段が干渉しない/しにくいので) 設計しやすく、調整が必要な場合でも比較的に各素子独立に調整できるという特長がありました。
しかし、

  • 性能を求めない
  • 高精度の素子を使わない
  • 調整しない

用途では、回路は簡単な方がよく、フィルタの全素子を 1 段にパッシブの状態で組み合わせる方法に利点があります。
その代わり、設計および調整が複雑になりますが、調整はしない前提なので、そこそこの性能の設計ができるかどうかが問題になります。
コンデンサの容量を E6 系列縛り (具体的には 10 と 33 のシリーズ)、抵抗値を E24 系列縛りでの設計で、かなり最適に近い結果が得られたので実験してみました。
LTspice に入力する回路図を下に示します。

AC 解析のシミュレーション結果を下に示します。

前回と同様に、下側のグラフの灰色の直線が -3 dB/oct (-10 dB/dec) の理想特性で、明るい緑色の線が 24 kHz カットオフの 3 次バタワース LPF 出力、赤色の線がピンクノイズ・フィルタ出力の総合特性です。
上側のグラフの暗い緑色の線は理想特性からの誤差です。
ラグ・リード 4 段なので、周波数範囲は 3 ディケードより広くすることができますが、高域は 24 kHz LPF で減衰させるので、レンジは低域側を拡げて、約 6 Hz まで -3 dB/oct 特性に乗っています。
20 kHz でのゲインは約 -0.8 dB とやや減衰が大きいので、周波数範囲の上限を 20 kHz より小さく、たとえば 19 kHz と選ぶことを許容するなら、誤差のリプルは周波数 6 Hz 〜 19 kHz の範囲の p-p 値で 0.7 dB 程度が得られています。
-3 dB/oct フィルタ部は OP アンプを使った反転増幅回路になっていますから、OP アンプの入力部の抵抗の 200 kΩ を小さくすればゲインを持たせることもできます。
回路図の定数は、10 Hz でゲイン 0 dB 程度になるように選んでいます。
実際にブレッドボード上に組んだ実験回路を下に示します。

前回と同様に、抵抗は J 級 (5 % 精度) の炭素皮膜抵抗、コンデンサは 10 % 精度程度のフィルム・コンデンサを使いました。
また、前回は言い忘れていましたが、OP アンプには JRC 製の入出力レイル・ツー・レイルの NJU7044 を使っています。
前回と同様に、 WaveGene でサイン波のリニア・スイープ信号を発生させ、WaveSpectra のピーク・ホールド機能を使って測定した周波数特性のグラフを下に示します。

ピーク・ホールド結果のデータを .WSO ファイルとしてダンプし、-3 dB/oct (-10 dB/dec) の理想特性からの誤差を計算してプロットした結果を下に示します。

抵抗で 5 % 精度、コンデンサで 10 % 精度の部品しか使っていませんが、リプルの値は p-p 値で約 0.8 dB であり、設計値に近い値が得られています。