ICL7137 (4)

 ICL7137 の標準の回路のままでセグメント出力から信号を引き出すだけでは適切なロジック・レベルが得られないことを説明します。
 ICL7137 のセグメント出力の内部回路と、外部の 7 セグメント LED との接続の様子を下に示します。

 出力部はインバータ形式となっており、アノードコモンの 7 セグメント LED と接続して、セグメント・ドライバ出力が「L」レベルの場合に LED が点灯します。
 プルダウン側の NMOS FET はドライブ能力が公称 8 mA に設定されており、電流制限抵抗を介する必要がなく、LED を直結できます。
 赤色 LED の順方向電圧降下 (VF) は約 1.8 V であり、標準の回路では 7 セグメント LED のコモン・アノード端子は 5 V 電源に接続されるので、点灯時の各セグメントのカソード端子の「L」レベル電位は 5.0 - 1.8 = 3.2 [V] になります。
 PIC16F1716 は入力ポートの特性を TTL レベルあるいはシュミット・トリガ特性のいずれかに設定できますが、「L」レベル入力電位が 3.2 V では、どちらの特性にしても、「H」レベルとしか認識できず、セグメント出力のロジック・レベルの判別が付きません。

 本来は必要ない「電流制限抵抗」をセグメント・ドライバ出力と LED カソード電極との間に挿入した場合の回路を左に示します。
 8 mA の電流を流して 3.2 V の電位差を電流制限抵抗の両端に生じさせるには、計算上 3.2 [V] / 8 [mA] = 0.4 [kΩ] の電流制限抵抗を使用すれば良いことになります。
 この場合、電流制限抵抗が電圧降下をすべて負担することになるので、セグメント・ドライバ出力の電位は計算上 0 V となり、ロジック・レベルの判別は最もマージンのある状態で正常に行えます。
 ICL7137 電圧計キットの利用を前提にしているので、この方法を実現するには基板上の 23 本の配線を切断して抵抗を挿入する必要があり、手間がかかります。 そのため、この方法は採用しませんでした。

 LED の電源を別にした場合の回路を左に示します。
 点灯時の LED のカソード電位を下げるにはコモンアノードに供給する電源電圧を下げれば良いわけで、ICL7137 に供給する 5 V とは別に、LED 用に 3.3 V とか 2.5 V とかの電源を用意します。
 この例では、LED 用に 3.3 V を供給しているので、点灯時の LED のカソード電位は 3.3 - 1.8 = 1.5 [V] になります。
 PIC16F1716 のスペックでは、TTL レベル特性の場合は VIL = 0.8「V] 、シュミットトリガ特性の場合は VIL = 0.8 VDD = 1 [V] となっており、1.5 V ではスペックを満たしていませんが、実際にはどちらのモードでもロジック・レベルを読み込むことができました。
 セグメント・ドライバ出力が「H」レベルの場合には、5.0 - 3.3 = 1.7 [V] の逆バイアスが LED に掛かりますが、逆耐圧 (VR) は 3 V 程度以上あるのが普通なので問題ありません。
 この方法では、7 セグメント LED 4 桁に対応するコモン・アノード電極それぞれへの配線計 4 本を改造するだけで実現できます。
 この方針による改造後の ICL7137 電圧計キットの基板の写真を下に示します。

 緑色の基板が ICL7137 電圧計キットの基板で、秋月 C 基板を追加して PIC16F1716 はそちらに実装しました。
 半田面でポリウレタン線を用いて配線してあるので、部品面からは配線は見えません。
 緑色の基板の右下隅にある黒い直方体が 5 V 入力 3.3 V 出力の絶縁型 DC-DC コンバータ・モジュール (MINMAX 社 MAU101) で、LED に 3.3 V 電源を供給するために追加しました。 印字面は左側面となり、写真では見えていません。
 「絶縁型」である必要はないのですが、外付け部品が要らず 4 本配線するだけで機能するので、このモジュールを使っています。