PCM5102A (1)
PCM5102A は TI/バーブラウン製のオーバーサンプリング・ステレオ・オーディオ DAC で、主要な特徴を挙げると次のようになります。
- サポートするサンプリング周波数は 8 kHz 〜 384 kHz
- 16 / 24 / 32 ビット・データを受け付ける (SNR/ダイナミック・レンジは 112 dB)
- ハードウェア・モード設定、つまり、ピンに与える電圧レベルでモードを設定する (マイコンの介入は必要ない)
- オーバーサンプリング補間フィルタは 8x / 4x / 2x / 1x (1x は素通し) が用意されている
- オーバーサンプリング補間フィルタは、直線位相特性と低レイテンシ特性との、いずれかを選べる
- システム・クロック「SCK」(マスター・クロック) は、64 fs 〜 3072 fs までサポート (周波数としては 50 MHz まで)
- 内蔵 PLL により SCK を供給しなくてもオーバーサンプリング動作可能
- 負電圧発生用チャージポンプ回路を内蔵しており、オーディオ出力は GND レベルを中央として正負に振れて、直流阻止用のコンデンサが不要
- 出力レベルの実効値は 2.1 V
- TSSOP 20 ピン・パッケージ
この中で、オーバーサンプリング補間フィルタについて、どういう条件で 8x / 4x / 2x を使い分けるのかについて、PCM5102A のデータシートには明記されていません。
同じ PCM51xx ファミリで、ハードウェア/ソフトウェア設定可能なバージョンである PCM512x のデータシートの Table 8. では、下のように
サンプリング周波数 fs とオーバーサンプリング比 (OSR) との間の関係が示されています。
ハードウェア設定オンリーのバージョンである PCM5102A には 16 倍オーバーサンプリングの機能はありませんが、その他については PCM512x と同様と考えられます。
PCM5102A のデータシートの Table 10. を下に示します。 (表をクリックすると拡大します)
この表には、サポートされるサンプリング周波数 fs とシステム・クロック周波数 fSCK との間の関係が記されています。
「—(1)」と表されている組み合わせはサポートされていないことを示し、その組み合わせではオーディオ出力は強制的にミュートされます。
「(2)」が付いている組み合わせは、内蔵 PLL を利用するモードであることを示しています。
サンプリング周波数 fs が 48 kHz 以下 (シングル・レート) の場合には、システム・クロック周波数 128 fs および 192 fs については内蔵 PLL を利用するモードに限られます。 外部から SCK を供給するモードでは動作しません。
外部から SCK を供給する場合は 256 fs 以上 3072 fs 以下で、SCK が 50 MHz 以下という制限があります。
fs = 88.2 kHz / 96 kHz (ダブル・レート) の場合には、SCK = 128 fs の場合だけ内蔵 PLL モードで、それ以外は外部 SCK モードになります。
fs = 176.4 kHz / 192 kHz (クアッド・レート) の場合には、SCK = 128 fs 〜 256 fs に限られます。
fs = 384 kHz (オクタル・レート) の場合にも SCK = 64 fs / 128 fs に限られます。
48 kHz 系のサンプリング周波数では、SCK を 24.576 MHz に固定のままで、fs = 8 kHz から fs = 384 kHz までカバーできます。
次回は、2 種のオーバーサンプリング補間フィルタ (直線位相 / 低レイテンシ) の周波数特性を測って見たいと思います。