PCM5102A (2)

PCM5102A DAC の出力スペクトラムを観測してみました。
とはいっても、手許にはスペクトルを観測できる機材は、PC のサウンド入力 + WaveSpectra しかないので、48 kHz とか 96 kHz とかの実使用のサンプリング周波数ではなく、最低の 8 kHz まで DAC のサンプリング周波数を下げています。
PC のサウンド入力ではサンプリング周波数を 192 kHz とすれば、信号周波数 96 kHz まで観測可能なので、8 kHz の 8 倍オーバーサンプリング周波数の 64 kHz も観測可能な範囲に入ります。
これでも、オーバーサンプリング補間フィルタの特性は観測できます。
オーバーサンプリング・フィルタの出力に接続されるデルタ・シグマ・モジュレータおよび DAC は 128 fs で動作するため、fs= 8 kHz でも 128 fs= 1.024 MHz となるため範囲外となり、モジュレータ部分から発生するノイズ・スペクトラム等は観察できません。
PCM5102A は PSoC5LP Prototyping Kit (CY8CKIT-059) に接続し、PSoC5LP のプログラムで発生させたリニア周波数スイープする正弦波で駆動し、DAC 出力に接続したホスト PC 上の WaveSpectra でピーク・ホールドして観測しています。
そのブロック・ダイアグラムを下に示します。

PSoC5LP 側のリニア・スイープ正弦波発生部分は 2015 年 11 月 18 日付けの記事 (→ こちら ) と同様ですが、オーバーサンプリングしていないのと、ソフトウェアの負担を減らすために L ch のみ信号を発生させています。
PCM5102A のデータシートの Figure 15. に 8x オーバーサンプリング時の直線位相補間フィルタの特性が掲載されています。 (ナイキスト周波数である 4 fs まで)

pcm5102a_fig15_small.jpg

直線位相特性を選択した場合の WaveSpectra による測定結果を下に示します。 (図をクリックすると拡大します)

p5102_192k_8k_fir_WS.png

WaveSpectra の設定は、

  • サンプリング周波数 192 kHz
  • 量子化ビット数 16 ビット
  • FFT ポイント数 131072 (128 K)
  • フラット・トップ窓

としています。
0 Hz からナイキスト周波数 (4 kHz) まで 180 秒かけてスイープしています。
フィルタの通過域 (0 dB) のレベルをグラフの目盛りの -20 dB に合わせています。
グラフの目盛りの -120 dB 程度から -100 dB 程度 (実際のレベルでは -100 dB 程度から -80 dB 程度) にかけて右上がりになっているノイズフロアは PC のサウンド入力側の特性で、DAC 側の特性ではありません。
実周波数の 32 kHz が Figure 15. の 4 fs に相当します。
64 kHz 周辺が 8 倍オーバーサンプリング・キャリアによるベースバンド成分のエイリアスとなります。
64 kHz を中央として凹んでいるのは、8 倍オーバーサンプリング後の 0 次ホールドの効果によるものです。
データシートの Figure 24. には低遅延 (Low Latency) フィルタの場合の特性が示されています。

pcm5102a_fig24_small.jpg

低遅延フィルタを選択した場合の結果を下に示します。 (図をクリックすると拡大します)

p5102_192k_8k_ll_WS.png

直線位相フィルタの場合の減衰域の減衰量はスペック上は 60 dB 以上となっているのに対し、低遅延フィルタではスペック上は 53 dB 以上となっていて、多少性能が劣っているのが分かります。