ADC 2 種 (PCM1808、TM7705N) の評価 (5)

TM7705N を使って、実際の DAC の特性を測ってみました。
測定対象としたのは Maxim MAX518BCPA で、I2C インターフェースのデュアル 8 ビット DAC です。
5 V 単一電源で動作する DIP 8 ピン・パッケージの IC で、電源電圧 (VDD) をリファレンス電圧として使用するので VDD を安定化する必要があります。
出力電圧は (負荷が軽ければ) GND から VDD まで変化する、レイル・ツー・レイル出力となっています。
また、型番の「B」サフィックスは「総合未調整誤差」(TUE: Total Unadjusted Error) が 1.5 LSB のレベルとなるグレードであることを表しています。
測定回路を下に示します。

MAX518 の電源として、シャント・レギュレータ TL431 で安定化した +4.6 V を供給しています。
MAX518 の出力は 0 〜 4.6 V まで変化するので、TM7705N への入力は 10 kΩ × 2 の抵抗で分圧して加え、ゲイン設定 1x の場合のフルスケール電圧 2.5 V 以下としています。
DAC0 出力の INL (Integral Non-Linearity: (積分) 直線性誤差) のグラフを下に示します。

測定は DAC にコードを設定してから 50 Hz のサンプリング・レートで連続して 32 回行い、その平均を計算したものを、その DAC コードに対する測定値としています。
このとき標準偏差の計算も同時に行っていて、多くは (ADC の) 1 LSB 以内におさまっていることを確認しています。
測定値に対して (2 乗誤差が最小となる) 回帰直線を求め、それを理想特性として誤差をプロットしたのが上の図です。
周期「8」の細かい変動が乗っているのが分かります。
INL の値が -0.25 LSB 〜 0.25 LSB の範囲におさまっているので、「精度」としては 9 ビット相当あることが分かります。
MAX518 の DAC1 出力の INL のグラフを下に示します。

INL の変動幅は DAC0 出力より小さくなっていますが、10 ビット精度には少し足りません。
ちなみに、8 ビット PWM DAC の測定結果を下に示します。

タイマ・クロック 84 [MHz] / 256 = 328 [kHz] が PWM の繰り返し周波数で、47 kΩ × 2 の分圧抵抗と 0.1 μF のコンデンサによる 1 次 LPF で平滑しています。
理論的には理想的な PWM DAC では誤差はなく、上のグラフでは TM7705N の内蔵アンプを利用しているので、0 V 付近で誤差が大きくなっていますが、それ以外の部分では、ほぼ、AD 変換時の誤差だけが見えている状態となっています。