シグマデルタ変調 PWM (6)

これまでのところで ΣDM PWM 出力の様子は概要が分かったので、今度は実際に VCO につないでみることにします。
と言っても、アナログ・シンセの VCO モジュールとして機能する回路は手許にないので、PX-150 のテスト用基板に作成した LM331/NJM4151 使用のリニア VCO 回路にベース結合アンチログ回路を追加して、簡易的な VCO モジュールを作成しました。
回路図を下に示します。

広いレンジでの直線性、精度、安定性などについては考慮してありません。
この回路で 100 Hz 程度を発振させた場合の波形とスペクトルを「WaveSpectra」で観測したものを下に示します。

入力の小数部 f = 0 に設定した 1 次 ΣDM 出力を CV として使い約 4 kHz を発振させた場合の VCO 出力のスペクトルを次に示します。

約 4 kHz の線スペクトルに絡み付いている -60 dB 程度の成分は、電源周波数 50 Hz を主な原因とするスプリアス成分です。
5.2 kHz 付近の成分は、不明な他の要因によるものです。
下に示すのは、入力の小数部 f = 1 に設定して約 1 kHz の成分が乗った 1 次 ΣDM 出力によるスペクトルです。

図で赤い矢印で示した約 3 kHz と約 5 kHz のスペクトル成分が CV 入力に乗った約 1 kHz の成分によって発生したスプリアスです。
1 次 ΣDM 出力に約 1 kHz の成分が乗った状態の VCO 出力を耳で聴いてみても、私には音の濁りのようなものは感じられませんでした。 感覚の鋭い人の場合にはどうなのかは分かりません。
もちろん、残留成分の少ない他の場合や、 2 次 ΣDM 出力でも差は感じられませんでした。
トランジェントの影響を調べるために、オクターブ・アップ、ダウンを繰り返す CV を発生させてみました。
その VCO 出力を録音し、波形編集ソフトで音程の変化点での波形を見たものを下に示します。

これを見る限り、大きな波形の乱れもなく、耳で聴いても特に不自然さは感じませんでした。
また、小数部を 1 ずつ変化させ、半音の 1/64 ステップで音程をスイープするプログラムを作り、聴いてみましたが、これも不自然さはありませんでした。
以上のことから、 ΣDM PWM によって分解能を上げる方式は十分実用的であると判断し、MIDI2CV プログラムの作成に移ることにします。