シグマデルタ変調 PWM (5)

2 次 ΣDM では 1 次 ΣDM に比べて内部状態の数が増えるため、出力系列の周期が大きくなることが予想されます。
といっても、MASH 方式では 1 段目の ΣDM の動作自体は 2 段目の ΣDM の影響を受けないので、全体としての周期は 1 段目の周期の 2、4、8、16、32 の倍数に限られます。
「総当り」方式の PC 上のプログラムで確かめてみたところ、周期は 64 が最大で、それ以上にはならないようです。

  • 入力の小数部 32 通り
  • sdm_acc1 の初期値 32 通り
  • sdm_acc2 の初期値 32 通り

を全て網羅する
\qquad \qquad 32 \times 32 \times 32 = 32768 通り
の「総当り」の設定で出力系列を発生させ、そのスペクトル強度の最大値を記録した結果を下に示します。

赤のグラフが 2 次の場合で、青のグラフが同様に 32 \times 32 = 1024 通りの総当りで求めた 1 次のスペクトルのグラフです。
赤と青の線スペクトルが交互に並んでいるように見えますが、青 (1 次) のスペクトルがある所には赤 (2 次) のスペクトルも重なって存在しています。 マーカーもプロットしていますから、重なっていてもレベル自体は読み取れます。
2 次の最大周期は 64 なので、最小の周波数の成分は
31.25 [kHz] / 64 = 488.28125 [Hz]
となり、スペクトルは約 0.5 kHz、約 1 kHz、約 1.5 kHz、約 2 kHz ... に並ぶことになります。
DC の 1 LSB を 0 dB とするスケールで表示していますが、最小周波数の約 488 Hz のレベルは約 -60 dB という、かなり低い値となっています。
約 1 kHz の成分は 1 次の場合のレベルと比べて 10 数 dB 程度低くなっています。
その代わり、7 kHz 程度以上の周波数では 1 次の結果よりレベルが大きくなっています。
下の図は 2 次 ΣDM に小数部 f = 0 の一定の入力を加えた場合です。

1 次 ΣDM では ΣDM に起因するノイズ成分は見られませんでしたが、ここでは、2 kHz 〜 10 kHz 程度の領域に成分が見られます。
次は小数部 f = 1 (8 ビット表現では 0x08) の場合です。

約 1 kHz、約 1.5 kHz、約 2 kHz ... に線スペクトルが見られますが、約 0.5 kHz の成分はよく分かりません。
次は 1 LSB p-p の振幅の正弦波の場合です。

ΣDM に起因するノイズ成分はよく分かりません。
今度は 1 LSB p-p の振幅の方形波で f = 0 の場合です。

約 30 Hz の方形波の高調波列の中に、約 0.5 kHz、約 1 kHz、約 1.5 kHz の成分が紛れているように見えます。 3 kHz 程度以上の成分は方形波の高調波列よりも大きなレベルになっています。
下の図は、同様の方形波で f = 1 (8 ビット表現で 0x08) のグラフです。

スペクトルの傾向は f = 0 と同様ですが、1 次 ΣDM と違って約 1 kHz の成分が強く出ることはありません。
次は f = 1 の階段波です。

1 次 ΣDM と違って、0 LSB の階段に約 1 kHz の成分が乗っていません。
今度は 32 ステップの階段波です。

拡大版は (→こちら)。
1 次 ΣDM と違って、特定の周波数が強く乗っているステップは見られません。