アナログシンセの VCO ブロック (9) -- リニア VCO 回路(4)

(C) コンパレータ1個とワンショット回路

タイミング・コンデンサの電圧が上端に達したことを検出するコンパレータ1個と、それをトリガとして一定の時間だけ信号を出すワンショット回路(モノマルチ)で構成される回路です。
リセット型 VCO では、(A) の方式と違って、タイミング・コンデンサは Vbot に向かって放電させます。 
こうすると、ワンショットで決めるリセット時間が、実際にコンデンサを放電させるのに要した時間より長い設定でも、コンデンサの電圧は Vbot に落ち着いていますから、問題が生じません。
この方式を素直に実現すると、アナログ・コンパレータと、ロジック素子のモノマルチ (monostable multivibrator) を使うことになります。

しかし、実際には、その方法はほとんど使われず、左図に示すような、コンパレータあるいは OP アンプを使ったワンショット・コンパレータが使われることが多いです。
この図の Vref には Vtop を供給します。

この回路は、この後の説明で分かる通り、コンパレータの出力レベルを、それぞれ Voh、Vol とすると、
  Vtop - Vbot < Voh - Vol
でなければ期待の動作は得られません。
まず、初期状態として、コンパレータのマイナス入力に接続されているタイミング・コンデンサ電圧が Vtop より低くて、コンパレータ出力は H レベル (Voh) で安定していて、コンパレータのプラス入力は Vtop になっていると仮定します。

  1. マイナス入力の電圧が増加
  2. マイナス入力の電圧が Vtop に到達
  3. コンパレータが反転し、L レベル (Vol) を出力
  4. タイミング・コンデンサは放電モードに入り、マイナス入力の電圧が Vbot 目がけて下がり始める
  5. コンデンサ両端の電圧は急変できないので、プラス入力の電圧は Vtop - (Voh - Vol) まで急速に下がる
  6. 抵抗を通じて徐々にコンデンサが充電され、プラス入力の電圧が上がる
  7. タイミング・コンデンサは、ほぼ放電完了し、マイナス入力の電圧は Vbot で安定
  8. プラス入力の電圧が Vbot に到達
  9. コンパレータが反転し、H レベル (Voh) を出力
  10. タイミング・コンデンサは充電モードに入り、マイナス入力の電圧が Vtop 目がけて上がり始める
  11. コンデンサ両端の電圧は急変できないので、プラス入力の電圧は Vbot + (Voh - Vol) まで急速に上がる
  12. 抵抗を通じて徐々に逆向きにコンデンサが充電され、プラス入力の電圧が下がる
  13. 十分な時間ののち、プラス入力の電圧は Vtop で安定
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