LPC1114FN28/102 (2)

シリアル接続で LPC1114FN28/102 のフラッシュに書き込むための「公式」のツールが「Flash Magic」です。
RS232C 制御信号の DTR/RTS を LPC マイコンの ~RESET/~BOOT ピンに接続しておくと、Flash Magic の機能を利用してターゲット・マイコンを自動的にリセットして ISP (In System Programming) モードに移行させることができます。
フリー (GPL) の書き込みツールとして、ChaN さん作の「lpcsp.exe」がありますが、これも同様の機能を持っています。
シリアル・インターフェース部に USB - シリアル変換器で 3.3 V ロジック・レベルの RxD/TxD/DTR/RTS 信号入出力を持つものを使えば、LPC マイコンの +3.3 V 電源の供給にも使えてハードウェア製作上の手間が省けます。
市販品にも RS232C レベルの信号まで変換しない 3.3 V ロジック・レベル入出力の製品もありますが、ここは追加費用なしですませるために、用途がなく「積み基板」となっている CQ 出版の雑誌の付属基板のシリアル・インターフェース部だけを利用することを考えました。
CQ 出版の基板では、USB - シリアル変換チップには CP2102 を使うのが伝統のようで、私の手持ちでは、V850 基板、FR60 基板、LPC2388 基板があります。
また、いわゆる MARY 基板や、DDT 誌付属の 78K0R 基板でも CP2102 が使われているようですが、私は所持していません。
手持ちの基板の中で、

  • 基板のサイズが小さい
  • DTR/RTS などの信号が引き出されている

という点から、インターフェース誌 2007年 5 月号付属の CQ_V850 基板を選びました。
この号は 2 冊購入して、基板 1 枚は FM 音源プログラム (→こちら) のために使用しましたが、残り 1 枚は帯電防止袋からも出さないまま積んでありました。
「改造」は最小限にして、容易に元へ戻せるように考えた結果、パターン・カットなし、ジャンパ線 4 本で実現できました。
信号線は JTAG デバッガ接続用の 10 ピンコネクタの CN3 に集めることとし、

  • (標準) USB TYPE-B レセプタクル
  • 2 x 3 ピンのジャンパ・ポスト (J1、J2、J3)
  • CN3 のヘッダ・ピン (10 ピン)

を通常通りに実装します。
J2 にはショート・プラグを差しておきます。
そして、下の回路図で青色の破線で示した 4 本のジャンパ線を配線します。

J3 の 1 番ピンは V850 のリセット端子につながっており、これを GND に落とすことで、CPU は常時リセット状態となり、I/O ピンはフローティングとなり、外部回路に影響を与えなくなります。
DTR (負論理) 信号は、もともと J2 をショートすることで FLMD0 信号をドライブするようになっているので、そのまま利用します。
RTS 信号は、オープン・ドレイン・インバータの 74LVC06 を 1 段通過して正論理となった状態で CN3 へ引き出します。
TXD/RXD については、それぞれ CN3 の 9/8 番ピンに引き出します。
TXD がつながる CN3-9 番ピンには LED1 が接続されているので、PC 側から送信されマイコン側が受信するシリアル・データの「0」の部分で LED1 が点灯します。
調歩同期式通信では、スタート・ビットは必ず「0」なので、送信されてくるデータが 0xFF であったとしてもスタート・ビット部分は必ず光ることになります。
ポリウレタン線を使用してハンダ面にジャンパ線を実装した写真を下に示します。

2 本のジャンパは J3 の 1 番ピンと 2 番ピンから配線すればいいので、ハンダ付けも簡単です。
TXD/RXD については、部品面であればジャンパ抵抗 (0 Ω) の R7 の両端や、集合抵抗 R3 の端子から配線できますが、ハンダ面では「ビア」にハンダ付けして配線しています。
LPC1114 基板側の回路図を下に示します。

Flash Magic の Help では、DTR/RTS の連動に 3 ステート・バッファを使って実質的にオープン・ドレイン・バッファを実現した回路が掲載されていますが、ここでは簡単に ~DTR (負論理) 側はシリコン・ダイオードまたはショットキ・ダイオードRTS (正論理) 側はデジタル・トランジスタ (抵抗内蔵トランジスタ) を使った回路で済ませています。
もちろん、デジタル・トランジスタ部分は (抵抗 + 普通のトランジスタ) でも構いません。
DTR/RTS からマイコンの端子への配線にある JP1、JP2 は DTR/RTS の連動/非連動を切り換えるものです。
連動させないためには、単純に DTR/RTS の接続を切ります。
この連動/非連動は CQ_V850 基板側でも切り換え可能です。

J1 OPEN
J2 CLOSE
J3 OPEN

で DTR/RTS 連動となり、

J1 CLOSE
J2 OPEN
J3 CLOSE

で DTR/RTS 非連動となります。
DPDT (双極双投: 2 回路 2 接点) スイッチを使って切り換える場合には下の回路のように配線します。

もちろん、ピンソケットを使用してスイッチと配線し、着脱可能にします。
実際の LPC1114 基板製作にあたっては、LPC1114 基板側にピンソケットを実装し、CQ_V850 基板と直に接続することにして、接続用 10 ピン・ケーブルの製作は省略しました。





長くなってきたので、Flash Magic に対する設定の話などは次回に回します。