アナログシンセの VCO ブロック (25) -- アンチログ回路(8)

これまでは、純アナログ的に連続時間で PTAT スケーリングをする話でしたが、今度は PWM で時間平均としてスケーリングする方法です。
回路としては、まず、CV のスケーリング部でスケーリング範囲の下限値と上限値とに相当するゲインを1ビットのディジタル値で選択できるようにしておきます。
そして、そのディジタル値は PWM (Pulse Width Modulation) として、時間平均後に目的のスケーリング値が得られるようなデューティーに選びます。
当然、PWM の繰り返し周波数は、それ自身およびビート信号がオーディオ信号に影響を与えないために 40 kHz 以上に選びます。
実質的には、PWM 部はマルチプライング DAC として機能していると言えます。
PWM 自体はマイコンを利用すれば簡単に実現できます。
たとえば、常温 (300 K) ± 25.6 K をスケーリング範囲とすると、9 ビット PWM を使用すれば、デューティーは 0 〜 511 の数値で選択でき、そのステップサイズは 0.1 ℃となります。
PWM 部は DAC として機能しており、一方、PTAT 電圧は連続時間のアナログ値ですから、当然、PTAT 電圧を AD 変換する必要があります。
一般に、マイコン内蔵の AD は 10 〜 12 ビット精度ですから、PTAT 電圧をそのまま変換したのでは、分解能としては不十分で、十分な分解能を得るためには、スケーリング範囲の PTAT 電圧が AD の入力レンジと一致するようなアナログ的な前処理 (レベルシフトおよび増幅) を行う必要があります。
この AD 変換部はマイコンを使わず、アナログ回路だけでも実現できます。
ランプ波形 (のこぎり波でも三角波でも、上昇部と下降部が直線で構成されていれば良い) を (コンディショニングされた) PTAT 波形でスライスするだけです。