ソフト S/PDIF トランスミッタ (17)

今回はソフトウェアから離れて、普通のディスクリート LED を使って S/PDIF 光送信モジュールを自作する話です。
LED が 6.144 Mbps のレートで点滅するわけで、「6.144 Mbps の LED チカチカ」と呼べるかも知れません。
S/PDIF 光送信モジュールを自作する話は以前に web 上の記事で見たことがあって、その時には「普通の LED でもできるんだ」と思う程度で、特に強い印象はありませんでした。
現在、検索してみると、次のサイト

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が見つかりますが、以前に見たのと同一かどうかは確信がありません。
手順は、ほぼ上記のサイトの記述に沿っていますが、使用 LED が異なるので一部違っています。
まず、一般的な「角型」形状の光モジュール (TOSLINK 型) の自作は困難なので、3.5 mmφ ミニ・ジャックの「後部」に光送信部/受信部を置く「丸型」を作ることにします。
「丸型」では、3.5 mmφ ミニ・ジャックの部分が光ファイバのコネクタ部を固定するメカニズムになっているので、その部分を「自作」する必要はありません。
使用した 3.5 mmφ ミニ・ジャックの写真を下に示します。

PC 用の古いサウンド・カードから外してきたもので、ピンの位置が 2.54 mm グリッドに乗っており、ピンの太さもユニバーサル基板のランドの穴径に適合するものになっています。
右側のオレンジ色の部品が「角型」ファイバを「丸型」モジュールと接続するための変換プラグで、ミニ・プラグの Tip / Ring / Sleeve の Tip 部分の先端まで光を通す構造になっていて、Ring / Sleeve 部分はプラスチックにおおわれていて電気的には絶縁されています。
3.5 mmφ ミニ・ジャックは「裏返し」に置いてあり、ジャックの開口部は「向こう側」を向いていて、「背面部」が見えるようになっています。
このミニ・ジャックは「裏ブタ」が外れるようになっており、左側のジャックは「裏ブタ」を外した状態になっています。
この「裏ブタ」の中央部に 2 mmφ 程度の穴をあけ、ミニ・プラグ先端に LED の光が当たるようにします。
加工後の写真を下に示します。

本来の使用法とは逆に、光ファイバの向こう側を光送信モジュールにつなぎ、光が通っているのが分かるようにしています。

使用する LED としては、凸レンズや凹レンズに相当する機能が組み込まれている「砲弾型」LED は好ましくなく、LED の光をそのまま透過するチップ LED が適しています。
サイズが約 3 mm 角と大きく、また 40 個入りで 200 円と安価なので、秋月の

赤色チップLED LST676−R 100〜200mcd (40個入): LED(発光ダイオード) 秋月電子通商-電子部品・ネット通販

を使用しています。
ただし、ピーク波長の標準値は 645 nm と、普通の光送信モジュールのピーク波長の標準値 660 nm と比べて波長が短い方 (オレンジ色寄り) に少し偏っています。

小型のチップ LED のように基板のランドが電極になっている方式ではなく、リードフレームの金属片が本体から出ており、それをパッケージに沿って曲げて電極としてあるので強度があり、リード線をハンダ付けして「自立」させることが可能です。
ユニバーサル基板に実装した状態の写真を次に示します。

黄色い「ショート・プラグ」は接続先を I2S2_SD / I2S3_SD のどちらにするかを切り替えるためのものです。
LED は「背面」しか見えていませんが、背面にも少し光が漏れてきています。
光ファイバの対向端に光が導かれているのが分かります。
LED のドライブ回路は簡単のため、単に直列に 2.2 kΩ の抵抗を介して、ポート出力につなぐ、「LED チカチカ」方式としています。
直列抵抗の値は、光ファイバの対向端から見て普通の光送信モジュールの場合の明るさと同じ程度になるように、感覚的、実験的に決めました。
光受信モジュールは、光入力のパワーの 10 dB 程度の変動は吸収できるので、それほどシビアに合わせる必要はないと思います。
光ファイバの対向端を光受信モジュール (東芝製、型番不明) につなぎ、ロジック出力波形をディジタル・オシロの「蓄積モード」で観察した結果を下に示します。
まずは、「本物」の光送信モジュール (東芝製 TOTX178) を使った場合です。

上のトレースは I2S3_WS 信号で、トリガを掛けるために使用しています。 下のトレースが受信モジュールのロジック出力です。
さすが「本物」だけあって、デューティーの大きな崩れはありません。
次は、今回の「LED チカチカ光送信モジュール」の場合です。

まず、極性が「本物」の場合とは反転しています。
デューティーは「H」側が「細く」なっていますが、これを改善するには回路が複雑になってしまいますから、これで受信側がうまく受け取れているなら、それで満足することにします。