3V単一電源動作の VCF (13)

Arp 型のアンチログ回路を、複合トランジスタではなく、ディスクリートの 2SA1015 と 2SA1815 とを使った場合の VCF 発振周波数の測定結果のグラフを下に示します。
前回と同様に、低域で周波数が高くなる現象があり、気になって、いろいろ調べていました。
アンチログ出力に VCF ではなく、リワインド型の VCO を接続して、Arp 型のアンチログ回路単体の特性を測定してみて、PNP/NPN 複合トランジスタの HN3B02FU と、ディスクリートの2SA1015/2SA1815 を使った場合とで、違いがあることが分かりました。

まず、PNP と NPN をひとつのパッケージにモールドしてある HN3B02FU の場合の、アンチログ回路単体の VCO 発振周波数の測定結果を下に示します。

これはちょっと意外な結果で、CV の大きいところで誤差が正、つまり発振周波数が高めに出る傾向になっています。
別の HN3B02FU の個体でも試して見ましたが、同様の結果でした。
この原因はよく分かりません。
一方、ディスクリートの 2SA1015/2SC1815 を、熱結合させて測定した結果を下に示します。

この結果は、高域で周波数が下がっていく、常識的に妥当と思われるカーブになっています。
ちなみに、PNP と NPN を熱結合しない場合の結果を下に示します。

CV がゼロの付近で周波数が高くなっていますが、これは、熱結合がないために起こる。見かけ上の現象です。
測定は CV を下から上に 256 ステップで増加させながら行っています。
周波数の測定には約 1 秒かかり、CV 変化後の安定した状態での値を得るために、ダミーの周波数測定を 4 回行い、その値は捨てて、5 回目の測定値を記録しています。
一通りの測定には約 30 分かかり、それを 3 サイクル繰り返しています。
CV が低い状態の測定の前には、かならず前回のサイクルの CV の大きい、高電流値での測定があって、その発熱の影響が残っています。
PNP は OP アンプを使ったフィードバック・ループでコレクタ電流を一定値に保っており、発熱はほとんどありません。
一方、NPN は、コレクタ電流の最大が 2 mA 程度となり、コレクタ損失も数 mW のオーダーになります。
TO-92 パッケージの熱抵抗を 250 °C/W と仮定すると、ジャンクション温度は 1 °C 程度は上昇することになります。
PNP と NPN の間に熱結合はないので、NPN 側だけ Vbe が 2 mV 程度減少し、結局、PNP のベース電圧を 2 mV 程度上げたのと等価になります。
この NPN の温度上昇は、新しいサイクルに入って CV がゼロとなり、コレクタ電流が大幅に減少してから数十秒程度の時定数で減衰していきます。
この温度低下と、測定が同時に進行していくので、まだ電流値が小さい領域の測定をしている間に NPN の温度が落ち着き、本来の値に戻っていきます。
測定が進んで、NPN のコレクタ電流が大きくなってきて発熱し始めると、熱結合がある本来の場合の値よりも大きなコレクタ電流が測定されるようになってきます。
この効果で、CV = 3.3 V 程度で本来は -50 セント程度になるべき誤差が、-20 セント程度に、見かけ上減少しています。