3V単一電源動作の VCF (11)

3V単一電源動作の VCF 回路を、ブレッドボード上に実際に回路を組んで実験してみました。
現在、アナログ・シンセサイザー・システムの VCF モジュールとして評価するための環境はないので、単に PC で発生させた信号を入力して、出力の波形観察、周波数特性測定、および耳で聞いただけです、
その限りでは、うまく機能していると思われます。
実験回路を下に示します。

2009 年の実験と同様に、簡単のために出力部の差動アンプには LM386 を使いました。
電源電圧の推奨動作範囲の下限は 4 V ですから、範囲外の使用となり、後で示すように歪なく出力できる範囲は 1 Vp-p 程度となります。
直流カット用のコンデンサの値は、Minimoog オリジナルの回路での値よりも大きめにしてあります。
アンチログ回路および出力差動アンプについては、この回路図とは別のタイプの回路での実験も予定しているので、共通するトランジスタ・ラダー部をユニット化して使い回すことにしました。
上の回路図で、青い破線で囲った部分、

を秋月の 16 ホール・ユニバーサル基板 (P-02515) を 1 枚 1 枚切り離す前の、「田」の字型に正方形に 4 枚つながった形の 8 x 8 = 64 ホールの状態の基板上に実装しました。

左に部品配置と配線を示します。
青い破線の 5 角形が、Top View で見たときの TO-92 パッケージの向きです。
それ以外の青い破線はジャンパ線で、青い太い線が配線です。
一番下のランドに信号を集め、6 P の「細ピン・ヘッダ」を実装して、ブレッドボードに差し込むようにしています。
実物の写真を下に示します。

ラダー回路は対称なので、入力側と出力側の対応さえしっかりしていれば、左右どちら側をプラス側と定義しても構いません。
入力差動段と、ラダー最終段は、トランジスタのマッチングが取れていることが重要なので、ラダーのユニット部分には載せずに、トランジスタ・アレイを使用しています。
回路図の Q1 〜 Q5 は TD62507、Q12 と Q13 は TD62505 を使用しています。
ラダー最終段に TD62505 を使ったのは、別のタイプの出力部の差動アンプで必要になるからです。
ラダー・ユニット部の 2SC1815 は、何の選別もしてありません。
PC 上の「WaveGene」でリニア・スイープ正弦波を発生させ、VCF に入力し、フィルタ出力を「WaveSpectra」でピーク・ホールドして表示させ、周波数特性を測定した結果を下に示します。

VCF のカットオフ周波数は 1 kHz 程度に設定し、レゾナンスは発振直前まで上げ、WaveGene と WaveSpectra は

  • 180 秒かけて正弦波を 1 〜 48 kHz までリニア・スイープ
  • 再生サンプリング周波数 192 kHz
  • 録音サンプリング周波数 96 kHz
  • FFT サンプル数は 128 K (131072)
  • FFT 窓はフラット・トップ

という設定にしてあります。
高域になるにしたがって低下していた出力レベルが、20 kHz 付近から再び持ち上がっているのは、オリジナルの Minimoog 回路の SPICE シミュレーションでも見られた現象で、おそらく、ラダー部のトランジスタの電極間の容量により、高域で入力信号が出力側に「筒抜け」になるためだと思われます。
WaveGene で 500 Hz の方形波を発生させ VCF に入力し、出力波形を観察した写真を下に示します。
これは、カットオフ周波数を上げ、レゾナンスを低くし、ほぼ「素通し」の状態にしたものです。

上の波形が PC から出力されてフィルタに入力された方形波で、下の波形がフィルタ出力です。
出力レベルは 1 Vp-p 程度が歪なく出力できる限度で、この程度以上にレベルを上げると出力アンプ部で歪んできます。
入力差動段のベース間のレベルとしては数十 mV のオーダーで、ラダー部で歪が大きくなるレベルまでは達していません。
そのため、過大な入力をフィルタに突っ込んだ場合の検証はできていません。
下の写真は、カットオフ周波数を数 kHz とし、レゾナンスを上げた場合です。