XR2206 (6)

最近では、実際に XR2206 を手に入れて、観測した波形写真などを載せた Blog などが増えてきました。
そのひとつである、「edy」さんの Blog

迷走の果て・Tiny Objects

の 4/18 のエントリに AM 変調した波形と、1 kHz、1 MHz での三角波の波形写真が掲載されていました。
「AM 変調波形」の写真を見て、下側のトレースには、きれいな正弦波が出ていると思ったら、どうやらこれは「変調入力」である外部の発振器の出力のようで、キャリアである XR2206 の出力は上側のトレースのようです。
1 kHz の三角波の周波数を波形写真から読み取ると、9 波で 9.7 div 程なので約 928 Hz、1 MHz の波形では、5 波で 7.7 div 程なので約 650 kHz となります。
本来、周波数の比は 1000 倍のはずですが、約 700 倍になっています。
1 MHz は発振周波数の上限の標準値ですから、その影響があるのでしょうが、アナログ・シンセの VCO としての応用の 20 Hz 〜 20 kHz の周波数範囲での直線性が気になります。
この Blog で紹介されている、Mario Lehwald さんの Web サイト (ドイツ語)

Die Elektronik Hobby - Bastelecke

では、矩形波三角波、正弦波出力の波形写真が掲載されています。
その正弦波波形を見ると、調整が合っていない場合も、合っている場合も、ほぼ「生」の tanh() 波形に近いように見えます。 
この波形で 0.5 % の歪率が実現できているのか疑問ですが、私が考えていた回路とは確実に違うことが分かりました。
\tanh(a \cdot x) - b \cdot x の回路で、もともとの三角波の成分をそのまま正弦波発生に使う場合、式で表せば、三角波x となり、それにスケーリングされた \tanh 波を重ねることになりますから、
\qquad\qquad x - (1/b) \cdot \tanh(a \cdot x)
と書くのが実際の回路に対応します。
ここで、歪率を最小に調整した場合は、必ず b < 1 となるので、\tanh 波のスケーリングは必ず 1 より大きくなります。
つまり、上の式の 1 項目の三角波である x より 2 項目の \tanh 波の方が振幅が大きくなるので、結果の正弦波の符号は負となる、つまり、三角波モードと正弦波モードでは出力信号の極性が反転することになります。
このような現象があれば注目を引くはずで、それが言及されていないということは、そういうことは起きていないと考えられます。
また、最適な状態に調整されていない場合の出力波形は、非常に特徴的な形となりますから、上記の Web サイトの波形写真を見れば、この方式でないことが分かります。
そういう訳で、私が考えていた方式は XR2206 には使われていないことがはっきりしましたが、\tanh()-x 方式は実際に回路を組んでみて歪率の測定などをしてみたいと思います。
また、Gilbert sine shaper 回路は非常に興味深いので、これも実際に回路を組んでみたいと思っています。