ディジタルオーディオ用 DAC をマイコンにつなぐ(8) -- MCF52233 + TDA1543A (1)

今回は、Philips 製のディジタルオーディオ用 16 ビット・シリアル DAC TDA1543A を CQ-FRK-MCF52233 基板につなぎます。
VS1053b の場合には、「A」タイプは入力フォーマットが I2S ではないため、うまく動作しませんでしたが、マイコンとの接続では I2S でないほうが好都合です。
価格は BU9480F が 210 円、TDA1543A が 500 円程度 (いずれも鈴商) ですから、コスト的なメリットはありません。
それでも TDA1543A を買ってきたのは、別な意図があったからです。
それは、電圧出力である BU9480F とは違い、TDA1543A は電流出力であることを利用し、アナログシンセの VCO 部に使うことを考えたからです。
MIDI から VCO をコントロールする場合、通常は、

マイコンによる MIDI-CV」 + 「アンチログ」 + 「リニア VCO」

という構成になります。 後側の2つがアナログシンセの VCO ブロックです。
それを、前の2つをディジタル回路として一体化して、

マイコン+電流出力DACによるMIDI-リニアCV」 + 「リニア VCO」

という構成にしようというものです。
しかし、ここでは、VCO としての実験は行わず、DAC としての入力フォーマットの確認にとどめ、普通のオーディオ用 DAC として扱います。
TDA1543A では、OP アンプによる I-V 変換が行われることを想定しており、DAC 出力のコンプライアンス電圧範囲は広くはありません。
TDA1543 のデータシートでは、

  • 上側の電圧が Vcc-1.2 V (Vcc - 2 * Vbe 分)
  • 下側の電圧が 1.8 V (3 * Vbe 分)

となっており、Vcc = 3.3 V では上側の電圧が 2.1 V で、300 mV 幅しかありません。
したがって、OP アンプを使わず、抵抗だけで I-V 変換する場合には DAC 出力電圧がこの範囲に入るように考慮する必要があります。
回路図を下に示します。

TDA1543A の入力フォーマット

TDA1543A のデータシートは Web 上では見つかりませんでした。
ググってみると、海外のオーディオのフォーラムでのやりとりから、TDA1543A は1サンプル当り 48 クロック (L/R 各チャンネル当りでは 24 クロック) が必要なフォーマットらしいことが分かりました。
実際に試してみると、やはり、

  • 1チャンネル当り 24 クロック (24 ビット)
  • データ長 16 ビット
  • 右詰め

のフォーマットでした。
また、WS (Word Select) / LRCK (L/R ClocK) の極性は、I2S とは反対の (いわゆる「標準フォーマット」と同じ) LRCK = 1 で左、 LRCK = 0 で右のフォーマットでした。
LRCK、データ長 16 ビット、右詰めは、BU9480F のフォーマットとも共通しているので、上の回路図のように、信号線をパラに接続した状態で、BU9480F と TDA1543A を共存させて使えます。
実際のプログラムについては次回の記事で示します。