トランジスタ都市伝説? (1)
この記事は、私がふだん思っていることを述べただけで、実証に基づいて言っているわけではありません。 もちろん、実験により実証したいとは考えていて、いくつかは計画中です。
すでに先人により、私の考えが誤りであることが実証ずみなのを知らないだけだったり、実験の結果、誤りが判明することがあるかも知れません。
信じるか、信じないかは、あなた次第です。
伝説
主にオーディオ用途向けだと思うのですが、販売店で を測定してペア組みしたトランジスタが、結構な値段で売られていたりします。
もちろん、 はバラついているよりは揃っていたほうが良いのはもちろんですが、 を基準にペア組みすることには疑問を持っています。
オーディオアンプではバイポーラ・トランジスタだけではなく、FET も使われますが、JFET の場合は がペア組みの基準に使われます。
バイポーラ・トランジスタが主のアンプで、部分的に FET が使われる場所は初段の差動増幅回路ですから、オフセット電圧を小さくするために を測ってペアリングするというのは理にかなっています。
バイポーラ・トランジスタの差動増幅回路のバランスを良くするためなら、測定すべきは ではなく、 特性だろうと思うわけです。
ごく普通のエミッタ接地増幅回路でも、ベースバイアスを決めるブリーダ抵抗には の 10 倍くらいの電流を流しますから、 が±10 % 変動してもベースバイアスに及ぼす影響は±1 % にすぎません。
逆に、もし、 の数字を1の位まで合わせないと良好に動作しない回路があったとしたら、そんな回路はおかしいだろうという話になります。
は、それ自体が問題なのではなく、トランジスタのマッチングの状態を表現している一種の指標として使われているのだと思います。
プレーナ型(現在のトランジスタはほぼ全部)のトランジスタは、各種特性をかなり一定にコントロールできるが、 だけはバラつきを抑えるのが難しいという話を聞いたことがあります。
それで、現実には、メーカーは をランク分けして販売しています。 たとえば、東芝の例で言えば、ランクを色分け(本当に色を付けるのではなく文字で)して、
R(Red) O(Orange) Y(Yellow) GR(GReen) BL(BLue)
のサフィックスを付けています。
Y と GR は良く使いますが、あまり見かけない V(Violet) というランクもあるそうです。
コントロールしにくい が揃っているなら、他の特性も揃っているだろうという期待をしているのかもしれませんが、それだったら、ちゃんと目的の特性を測れよ、と言いたくなります。
もし、(アセンブリでのロットではなく)ウェハプロセスでの同一ロット内あるいは同一ウェハ内の のバラつきが小さく、異なるロット間あるいは異なるウェハ間の のバラつきが大きいとすれば、 をロットの同一性の指標として使うことができます。
測定した が大きく異なっているふたつのトランジスタは異なるロットで製造された確率が大きく、 の差の小さいふたつのトランジスタは同一ロットの可能性が大きいことになります。
しかし、多数のロットを混ぜて ランク分けをすると、 の数字は近いが、何の縁もゆかりもないロットに属するトランジスタが多数含まれることになります。
現実には、どうなっているか分かりませんので、やはり目的の特性を測るのが一番でしょう。
手許には秋月の1袋 200 個入り 600 円の 2SC1815(GR) と 2SA1015(GR) があるので、 と 特性に相関が有るのか無いのか、そのうち調べてみたいとは思っています。